ドリーム小説
towa13
「___・・・」
どこか遠くに聞こえる声。
「・・・・__!
誰を呼んでいるのか、其れは耳にやさしく響く。
「___っ、_っ!」
「っ!!」
がばり
いきなり覚醒した意識に、突然起き上がる。
と、ふらり、いきなり立ったせいであろう。
視界が回り、再び先程までの場所に横たわることに。
そこは上から照りつける光とは違ってひんやり、心地よい。
その眩しい光から逃れるために手を目の前にかざす。
光が遮られたことにより意識がはっきりとしてくる。
くつくつと頭上から笑い声。
そして心配げにかけられたのはまた違う声。
「くっくっくっ・・・、大丈夫〜?」
「、大丈夫でござるか!?すまぬ・・・」
手合わせ
剣術
体術
最後に覚えているのは頭に走った衝撃。
そうだ確かと主は庭で剣術修行に勤しんでいたのだ。
だが日に日に強くなっていく打ち合いの力についつい足元がおろそかになってしまった。
足元にあった石に気づくこともなく。
ふらり体が傾くと同時に気づいたがときすでに遅し。
主の打ち下ろしに反応が遅れた上受身を取りそこなってしまった。
ばっと、頭に浮かんだそれらに再びばっと起き上がる。
やはりくらりと来たがそれを気にも留めず目の前の人物に、自らの主に向って言った。
「主のせいではありません!あたしが受身を取りそこなったせいでございます!!」
しゅん、とした表情で俯く主に必死で弁解する。
(頭に犬の耳が見えそうになるのは気のせいだ!!)
「だがは意識をなくして・・・」
「そっ、そんなのは何でもありません!!気になさらないでください!」
あうあうと沈む主をどうしようかとあせっていればやはり笑いを含んだ声で今のにとっては救いが聞こえてきた。
「旦那〜見たところ、怪我もないみたいだし大丈夫だよ〜。むしろ旦那が気にしすぎるほうがにとってはどうしよう、てなるんだよ〜?」
まだまだ幼い主に言って聞かせるように。
その言葉に主はそっとを覗き込んできた。
「本当に大丈夫なのか?」
「はいっ!大丈夫です!」
にこにこしてそう返せばにぱり、太陽のように主は微笑んだ。
そのまま向こうにあった竹刀をとりに主は走っていった。
(たぶん倒れたときに向こうに飛んでいったんだろう。)
その姿を見てほっとしながら長にお礼を言う。
「・・・長もありがとうございます。」
「いんや〜、見事なまでに吹っ飛ぶもんだからおどろいちゃった。」
「・・・。」
その長の返答にむすりとすれば、それで再び笑われて。
「・・・以前は主よりも強かったのに・・・。」
その呟きに長が便乗した。
「そういえばそうだねえ?はじめが此処に来た頃は、俺様が1番で次にが強かったよねぇ。」
は此処に来るまで立派に忍びとして訓練を受けていた。
そのせいであろう。
此処に来たときは主よりも様々な面で優れていたのだ。
残念ながら長には勝てなかったのだが。
「・・・いつの間にか主も大きくなられて・・・。」
「いや、それにも俺様にも言えることだからね?」
「このままあたしの手を離れていくんでしょうね・・・。」
「いや、そもそもは旦那の世話してないよね?むしろされてたよね?」
「あんなに小さかった主はどこに・・・」
「いや、それもだよ?・・・あんなに素直だったはどこに行ったんだろうねえ・・・」
「・・・あたしは主をお守りするためにここにいるのに、主より弱くては立場が・・・居場所がなくなってしまいます・・・。」
ぼそり小さな声で呟いたに長はやわらかく笑って言った。
「俺様も旦那も。別にを旦那を守るためだけにこの場所においてるんじゃないよ?がである限り、ここはの居場所だ。」
その言葉に目頭が熱くなる。
ぐっと其れをこらえて長を見上げて今出来る精一杯の顔で笑う。
そうすれば長も笑い返してくれて。
それは暖かな時間。
柔らかな時。
ぱたぱたと走りよって来る音に振り向けば主の姿。
「むう?二人とも何を話しているのだ?」
「主はおっきくなりましたねえ。」
「そうそう。旦那も成長したねえって。」
「うむ!おっきくなったであろう?」
「ええ。以前はあたしの方が強かったのに、今ではやるたびに勝敗が変わりますから。」
「もう子供だとは言わせぬぞ!」
子供、といわれるのが好きではない主だったから言われた言葉が嬉しかったのだろう。
胸を張ってそう告げた。
それに長は意地が悪く笑った。
「てことは、もうこのお饅頭もいらないよねえ〜」
取り出したお饅頭に主の瞳が輝く。
が長は其れを手を伸ばす主から遠ざけた。
「なっ!」
がんと驚きを受ける主に向ってあくどい笑みを浮かべ続ける。
「『子供』じゃない旦那にはもうこんなのいらないよね?」
「ぐうっ・・・」
そういうところが子供だといわれる原因だというのに、其れすら気づくことなく。
主の目線はお饅頭に注がれ続けていて。
「さて、じゃあこれはに上げようかな。」
「あ、あたしですか?」
差し出されたので反射的に受け取ってみたものの、主からの視線が怖い。
さてどうしようかと長を見ればニヤニヤと笑ってて。
(・・・意地が悪い。)
そんなことを思ったのは秘密だ。
どうやってお饅頭を手に入れようと考えているのであろう主。
そんな主を見ていれば自然に顔がほころぶ。
ああ、ならば・・・
「主!お饅頭をかけて勝負!です!」
「え?」
「あたしが勝ったらお饅頭はあたしのです!主が勝てばお饅頭は主のものです。」
の提案に一度ぽかんとした後主はにやり、今までとは全く違う好戦的な笑みを浮かべた。
その姿はまるで獅子の子のよう。
再びお互いの竹刀を握り構える。
そうして始まる前、ふと思い出した先ほどのこと。
顔を向けず口だけで長に告げる。
「長!いつかあなたに勝って見せますからっ!」
「楽しみにしてるよ〜」
帰ってきた楽しげな声に目を細めて主に向って足を踏み出した。
けれども
そんな日は遂に来なかった。
時の流れはあまりにも残酷で
時代の動きにただただ忠実で
あたしたちの知る世界はあまりにも狭すぎたんだ。
ゆっくりと開いた目に映ったのは白い天井。
清潔感溢れるその場所は先程とは全く違っていて。
ゆっくり体を起こせば目の端に橙が移る。
そちらを向けば優しい色。
向けられた目線
耳に馴染む声。
「ちゃん大丈夫?」
そこにいたその人物にぽとり、何故か涙が零れた。
気づいて
気づいて
思い出して
思い出して
悲鳴を上げるように訴えるのは
一体誰ですか?
___あなたにかつのがあたしのもくひょうだったのです___
※※※
いつかのきおく。
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