ドリーム小説
towa-14
柔らかな夕焼け空は
あまりにもあの人に似すぎていて
どうしても 手を伸ばすことが出来ないのです。
「っ、、ちゃん?」
ぽたりとこぼれた涙に佐助の驚いた声がかけられる。
でも自身にも何故自分が泣いているのか解っていないのでその涙を止めることもできず。
無意識下で零れるそれになす術もなく流れるままにしていれば、
ふわり
暖かさに包まれた。
それに驚き涙が止まる。
でもぬくもりはそこにあって
どうしようもなく
懐かしいと
体が叫ぶ。
誰かの名を呼びたくて
喉が疼く。
優しい温もりに
幸福感を感じる。
「っ、・・・せん、ぱ・・・」
その人を呼べばさらに強く抱きしめられる。
一度止まったはずの涙は、その温もりによって溶かされて。
「っ、ふっ・・・」
何に泣いているのかも解らないのに、それはとどまることなく。
「大丈夫だよ〜ちゃん。」
優しく背中を撫でられて、柔らかく名前を呼ばれて
縋るようにしがみ付いた。
(・・・ちょっとまて)
一通り涙が過ぎ去りふ、と息を吐いた瞬間。
は今の状況を考えてみた。
密室(保健室)
↓
二人きり
↓
下校時間(つまり周りに人気がない)
↓
もうひとつおまけに
今と佐助は本人にそんな意思はなくとも、はたから見れば完璧に抱き合っている。
その考えにたどり着いた瞬間、は思い切り顔を赤くして佐助から離れた。
それはもう、ばっと音がするくらいに。
「・・・ちゃん?」
それにきょとんとしたのは佐助で、でもその一拍後にはの赤い顔により意味を悟ったのかにやりと愉しそうに笑った。
「ちゃん?」
ぎしり、医務室のベットの上にはいて、佐助はそんなを側の椅子から抱きしめていた。
つまり佐助が距離を詰めればはそのぶん後ろに下がる。
いたちごっこの始まりだ。
とはいってもそれにはすぐに限界が来るものだから。
「つっ、ぇあ!」
目の前、至近距離に佐助の整った顔があればはどうすることも出来ず、不思議な悲鳴を上げる。
さらに近づく距離。
それに思わずが目をつぶった瞬間__
がらり
突然開いた戸に驚いたのはで慌てて佐助を突き放すも時すでに遅し。
「・・・・猿飛くん。後は私がやっておこう。君は早く帰りなさい。」
そこにいたのはなんともいえない素晴しい笑みを浮かべる、婆娑羅学園科学教師の松永久秀であった。
佐助が帰り、(追い返したといえなくもない。)かわりに久秀が椅子に座る。
「・・・おじさん。」
「学校では先生と呼びなさい」
「・・・先生。」
「なんだね?」
ぽつりと呟けばそのように帰ってきて。
「なんだか、変・・・」
「君の頭がか?」
「・・・ひどい。」
容赦の無い物言いだが、にはなれたもので。
「ふむ、ちがうのかね?」
「・・・あんまりちがわない」
「それで?」
「・・・あたしは、あの人を、知ってるんですか?」
「私に聞かれても困るのだが?」
確かにそうだなあと、ぼんやりと考える。
「・・・なんかよくわかんないんだ。涙が勝手に出てきたりするし、よくわかんない夢は見るし・・・」
そういいながらの頭は再びもやがかかったようになってくる。
「しらないひと、なのに、はじめてみた、ひとなのに、なんだか、へんにきになる・・・」
うつらうつらと頭が前後に揺れる。
其れを見て久秀はそっと目元を和らげる。
どんな風に接していようと、やはり可愛いもので。
そっと横たえてやればもぞりとうごき、かすかにしか開いていない目をこちらに向けた。
「眠りなさい。もう少し。」
其れを合図にしたようにゆっくりとその目は閉じられて。
可愛いからこそ、にくいと思う。
この子を悲しませる全てのものを。
「本当に彼は君を悲しませることしかしないのだね。今も、昔も。」
「・・・ん・・・?」
「いや。なんでもないのだよ。」
久秀がぼそりと呟いたが薄れいく意識のの耳に其れが届くことはなかった。
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