ドリーム小説
towa 19
「・・・逃げて・・・」
「え・・・?」
「この場所から逃げて?じゃないと、兄さまはあなたのこと利用する。」
それは偵察の任務。
ちょっとした失敗をして。
捕まった織田の地で、助けてくれたのは彼のお姫様。
黒い髪をゆらり揺らして悲しげに眼をふせる。
「でも、市姫様っ、」
「私はあなたのこと、嫌いじゃないわ。・・・武器はこの隣の部屋。兄さまたちは今遠征中だから・・・」
だから、今のうちに__
そういって彼女はとても儚げに微笑んだ。
「っ、ありがとうございますっ!」
あの人の逆らって、そしてあの姫様がどのような道をたどったのか。
それはにはわからなかった。
でも、あの人のおかげでは再びあの場所に戻ることができた。
「姫、さま・・・」
つぶやいた言葉は何だったのか。
それはこぼれたそばから記憶から消去されていき。
「ようやく起きたか。。」
目の前、暗くなったと思えばそこには恐ろしいほどの笑みを浮かべた教師がいた。
「さあ、前の問題を右から左まで全部卿に解いてもらおうか。」
松永久秀その人の言葉には黒板を見てひきつった顔をした。
それもそのはず。
黒板にはぎっしりと書かれた化学式があったのだ。
今まで眠っていたには書かれた問題が謎の物体にしか見えない。
ゆっくりと顔を横に向ければ困ったような顔で起こしてあげられなくてごめんっ、と手を合わせているあきはがいて。
あきはが悪いわけがないのでふるり首を一度ふれば上からほう、という声が降ってくる。
「そうかそうか。首を振るということはつまりこの問題は卿にとって簡単すぎるということか。それは失礼した。ならばもう一つ上の問題を出そうではないか。」
あきはに向けて首を振ったのに、目の前にいた久秀にとってはそのようには思えなかったらしく、不気味なほどの満面の笑みを浮かべて黒板へと戻っていった。
もちろん、新たな問題を書きだすように、だ。
「ちゃん?大丈夫?」
「・・・あきは。」
無理矢理解かされた問は決して簡単なものではなく、休み時間のチャイムにしてようやっとは解放されたのだった。
そこにあきはが心配そうに寄ってきて。
「最近、ちゃんよく寝てるけど大丈夫?バイト忙しいの?」
「ああ、大丈夫だ。」
「ほんと?無理、してない?」
『ほんとに無理してない?』
ことり傾げられた様子に、言葉に、何かが被る。
「うん。心配してくれてありがと、な、あきは。」
それらを無視して笑って返せばあきはもとびきりの笑みを見せてくれた。
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