ドリーム小説










towa 26








いつもと変わらない朝だった。


たったひとつ違うことと言えばとてもとても悲しい夢を見たことだ。




それは記憶の中の存在。

本当かどうかもわからないもの。

でも、確かに彼女はそこに存在していたのだ。

幼いながらも精一杯俺という存在を守ろうとしてくれていた彼女は。



昔からよく夢を見ていた。

ただの夢というにはあまりにも知っている人が多い夢。

橙色の髪を持った友人とか、尊敬すべきお方とか。

それは夢だったけれども、俺が確かにそこで生活しているようにも感じられる夢だった。

毎日見るわけではなく、ふとした時に見るもので。

俺という存在はその場所で戦う者だった。

橙色の彼は俺につかえる者だった。

尊敬するお方は、その場所でも俺の道しるべであった。

戦という血なまぐさい時代でありながらもそこは


    温かな穏やかな場所だった。





けれど、今日見たものは違った。

小さな体で精一杯俺を守ってくれていた彼女。

はにかむ笑顔ですさんだ心を癒してくれていた彼女。



今日見た夢はそんな彼女が目の前で死ぬ夢だった。






起きた時目から溢れる涙が止まらなかった。


守るべき存在は彼女の方だったのに、彼女に甘えていた俺は彼女を助けることができなくて。

死のふちまで彼女は微笑んでいて。





夢だというのに鮮明に思い出されるそれがとてつもなく悲しかった。








すり抜けた命はいまだ、出会うことはなく


















朝練が早く終わったから、教室で睡眠でもとろうかと思って教室に向かっていた。

はたりはたり

静かな自分の足音に微かに交る微かな音。

それは下からずっと自分の後を追うようについてきていて。

まだ早い時間だというのに珍しいな、と思いながらも、自分にようがあるというわけではないのだろうからほおっておいた。


そんなことよりも夢が悲しすぎて。



くるり


踊り場を曲がり自分の教室が見えてきたとき、

ぱたり

今までで一番大きな足音が聞こえた。


それと同時に頭に巻いていた紅い紐が、くいと、引かれた。


「!」


驚き振り向いたそこ

嘘だと思った

瞳をこぼれんばかりにおおきく見開くその姿。




だぶるだぶる

夢と現実が

交る交る

本当と嘘が



「あ、るじ、ゆきむ、らさ、ま」







夢から抜け出たように彼女が







がそこにいた。
















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