ドリーム小説
towa 28
いやな夢を見た。
彼女が死ぬ夢を
目の前で倒れ伏す夢を
目の前で命の色が消えて行く夢を
体中が、絶望という名の叫びをあげ
心の底から痛みがこみあげて
それにこたえるかのように涙が溢れた。
ただの夢のはずなのに
なぜか、それは彼女の顔だった。
「!?」
聞こえた来たその声は間違いなく旦那のもので。
そして呼ばれた名前は、今日の夢に出てきた彼女と同じ顔を持つ人のもの。
焦ったような声に、
旦那らしくないと思いながら下を向いていた目をあげる。
階段の踊り場
くるりとそれを曲がり
俺の横をすり抜けた。
その瞳から溢れる雫に、目を奪われた。
必死に逃げるその体に、手を伸ばしそうになった。
心が全力で歓喜の声をあげた
「佐助!を追いかけるぞ!」
「旦那?!」
走ってきた旦那の切羽詰まった表情。
それにきしりと心臓が音を立てた。
固く固く閉ざされていた記憶が
きしんだ
「何をぼおっとしておるのだ!佐助!」
「だって旦那___」
「まだ思い出せぬのか!?」
きしりきしり
「は某たちの大切な___」
きしりきしりきしり
「大切な仲間であろう!?」
記憶がひも解かれるように溢れた
紅い主
暑苦しい主従
はにかむ笑み
幼い彼女
蒼い竜
くのいち
赤い悪魔
いとおしい感情
溢れる赤
奪われた命
記憶が溢れた
夢の彼女は確かに、だった。
あのは確かに、彼女だった。
橙色は俺で
紅い主は旦那で
暑苦しい主従は御館様と旦那で
はにかむ笑顔はあの子のもので
蒼い竜は政宗で
くのいちはかすがで
紅い悪魔は小太郎で
溢れる赤は
奪われた命は
のものだった
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