ドリーム小説







towa 30











「佐助!は?!」

「ごめん、旦那!見失った!」


旦那の声に追い立てられてすぐさま後を追ったというのに、彼女の姿はもうどこにもなく。

「あのころ」であれば、すぐに見つけられた彼女でも、「げんざい」ではどこにいるのか見当がつかなくて。


頼むから、もう姿を消さないで

お願いだから、この手の届かないところになんて行かないで。

そうはいっても忘れていたのは俺もだから何も言えない。



でも、それでも、


もう目の前で倒れ行く君を受け止められないのは、いやなのだ。




「Hey!幸村、佐助、何してんだ?」

焦る気持ちをなだめて、彼女の気配を探ろうとすれば聞きなれた声。

「政宗、ちゃん、見なかった!?」

それに何を考えるでもなく、口から出た言葉。

「あ?Honey?今日は見てねえぞ。」

あっさりと返された言葉に、かちり意識を切り替える。

記憶を手繰る

あのとき ならあの子は何処に行っていた?

まとまらない考えに頭を抱えそうになる。

先ほどみたいに気配を探ろうにも、登校時間になったのだろう。

他の気配が強すぎて探せない。



どこにいる?

どこで泣いてる?



くるりくるり

考えて考えて。



「何をしておる。」


そんな中声をかけられたのは我らが生徒会長様。

 そして、かつて中国地方を支配していた覇者


「っ、元就殿、を見かけなかったか!?」

旦那の切羽詰まった声にわずかに目を細めて元就は言葉を発した。

「見てはおらぬ。」

それにやはりと思えば次いで思いがけぬ言葉。

「が、心当たりはあるぞ。」

「っ、本当か!元就殿!」

がばり、考えていた旦那の顔が輝く。

それを一蹴して元就はまっすぐに俺たちを見た。

「その前に聞こう、思い出したのか?」

かちり

言葉の意味を考えるまでもなく、まじまじとその顔を見つめれば、綺麗な顔が面倒そうに歪む。

「聞いているのか?「元就〜あれ、佐助たちもいるじゃねえか」・・・思い出したのかと問うている。」

ぺたりぺたり上履きを引きずりながら現れたのは片目眼帯の銀髪男。

さらに歪んだ元就の顔だが、どうやら完璧無視を決め込んだようだ。


「俺はもともと覚えておる。」


「ちょ、へ?旦那!?」

旦那の思いがけない告白に驚くが、旦那は俺を無視して話しを続ける。

「幼きころから夢として、記憶されていたそれが現実のものだったと確信したのはついさっきだがな。ちなみに佐助は先ほど思い出したようだ。」

元就の黒い眼がまっすぐに俺を貫く。

言葉を発せずに、見つめ返せば制服をひるがえし歩み出す元就。

「ついてこい。」

「ちょ、元就?!」

「感謝いたす。行くぞ佐助。」

「了解、旦那。」

元親の言葉をこと度とく無視した元就に従い俺も旦那も歩み出す。

なんか、後ろから政宗がついてきてるのも無視だ無視。




今行くから。

今見つけるから。

お願い逃げないで




はたりはたり続く廊下を元就について歩んでいれば、前から見知った気配。

見やれば焦ったような赤い髪。

それは俺を見つけたと思ったら全力で近寄ってきて。

「わ、小太郎どうしたの?」

飛びついてきた小太郎にそう問えば、言葉を発さずに口を動かす。

、が、泣きながら走って言ったよ。何かあったみたい。』

読み取ったそれは今追い求めている彼女のもの。

「っ、何処に走って行った?」

『松永先生のところ、』

はたりはたり告げられる言葉に、彼女が泣いているという言葉に。

体が勝手に走りだした。



「佐助!?」


後ろから小太郎の追いかけようとする気配を感じたが、それもすぐになくなったから旦那か元就が止めたのだと思う。


でも、そんなことよりも今は早く


あの子に会いたい





そこから動くなよ

泣きたいなら俺の胸をいくらでも貸してやるから


一人きりで泣かないで











松永先生、基、松永久秀はからり扉を開けて俺の前に姿を現した。







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