ドリーム小説








towa5





「探していたのだよ。君。」



その声が聞こえたと同時にの体は脱兎のごとく走り出した。
それはもうありえないほどの速さで。



(なんで、何であの人がここにいる?!)


混乱する頭の中必死で考える。

彼は知ってる人、と言う言葉では表わせないほどよく知る人で。

は彼が苦手だった。
どこがどうと言うわけではなく、苦手なのだ。
その雰囲気が。
声が。
姿が。

つまり あの人の全てが。

初めて会ったときからこの感覚は変わらない。
それどころか会うたびに強くなっていっている。
だからはできるだけあの人に会うことの無いようにしていた。
なぜか怖かったから。




自転車置き場が遠くにではあるが確認できるようになった。


とりあえずはあの人のいるこの学校から逃げるのが先である。

そうしてそのまま走り続けた。


「危ねえ!!」


運動場の側を通ったときそんな声が聞こえた。










かすがと言い合っている際中のこと。
入り口に感じた気配にそちらを向けばる。
そこにいたのは、この婆娑羅学園科学担当教員である、松永久秀であった。

「探していたのだよ。君。」

     −

こちらには目もくれず告げられたその言葉。
聞きなれないはずの名前になのに、その名前に胸の奥で微かに何かが音を立てた。

すぐにその名前はあの少女のものだと行き着き、そちらを見る。
と、脱兎のごとく逃げ出す彼女がいた。

「・・・へ?」

思わずもらしたそんな間抜けな声に、彼、久秀はこちらを向き言った。


「猿飛君。あの子を捕まえてきてくれ。」

「あー・・・。」

告げられたそれに微かなためらいを見せれば久秀は溜息をつき再び口を開いた。

「食券1週間分でどうかね。」

「行って来ます。」

「は?猿飛お前っ!・・・」

その言葉を聞くなり、即答。
側で叫ぶかすがの話も聞こえない。
条件を付けられたら行かないわけにはいかない。
ましてや、食券。
佐助の脳裏にあの大食らいの同居人が浮かぶ。

(ごめんね〜ちゃん。俺様、現実的なことには弱くって。)

頭の中で謝罪を述べて逃げた彼女を追いかけた。















「危ねえ!!」

「え・・・?」

その声に顔を向ければそこにはすごいスピードで迫ってくる物体。
認識すると同時に体が勝手に動いた。

向かい来る衝撃に

手が動いた。


ばしり


掌が酷く熱い。
腕のばねを利用して受け取ったそれは掌におさまる大きさ。
掌の中で未だに勢いを失くし切っていない。
ちりちりとした痛みが広がって。




「びっくり、した・・・。」

そのボールに驚いたというよりも、その自分の動きにびっくりして思わず上擦った声が出た。


「Hey girl?!大丈夫か!?」

そう言って駆け寄ってきたのは眼帯の男。
その整った顔に心配の色を見せて。

脳裏が揺らぐ




 蒼 く 蒼 く そ れ は   空 の 青 さ  よ り も 蒼 い 




「まさか、catchしたのか?」

の手に収まるその野球ボールを見たのであろう、その男は驚いたように呟いた。
その声に持っていかれそうになった意識をやや強制的に戻す。

「、なんか、とれ、た・・んです・?」

まだ若干驚いていたのか、片言になってしまう。
それに自身も驚きながら





ちゃ〜ん!」

聞こえてきた声は佐助のもので。

振り向こうとして聞こえてきた次の言葉に体が固まった。


「あっ!独眼竜の旦那、いいところにっ!」

「Ah〜?」

「その子捕まえて!」


その声と同時に腕をその人の手に掴まれる。
やばい、そう頭で理解するよりも先に体は動いていた。

「っつ!?」

掴まれた腕をひねって避ける。
そのままその人を思い切り走ってきた佐助へと

 投げつけた。

「What!?」

「ちょっ、」

「絶対、あの人のとこには行きませんから!」


目の端で佐助が投げた男の人をよけていたのが見えた。
驚く二人に言葉を投げつけて、全力で自転車置き場へと向かった。
後ろの会話は聞かないようにして。
「ちょ、何とばされてんのさ、旦那?!捕まえてって言ったよね俺様!」
「腕は掴んだんだよ!」








「さて、。鬼ごっこはおしまいだ。」


自分の自転車に座るその男を見ときは体から力をなくしへたり込んだ。



















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