ドリーム小説
towa-8
・・・・・・・・・・・
「だって知ってるじゃないですか。あなたは、あたしのことを。」
その言葉に心臓が強く音を立てたのを感じた。
(・・・ほんと、びっくりした。)
今日の活動の場である新聞部の部室へ向かいながら、佐助はそう思っていた。
自己紹介してもらってないと、そう思っただけ。
なのに、彼女の言葉が深く胸に食い込んで。
思えば、初めて会ったとき。
そのときにも違和感は感じていた。
会った事のないはずなのに、どこか懐かしいと。
そんな感情に呑まれかけて。
桜色に包まれる彼女を見たとき、知らない光景が脳裏に浮かんだ。
倒れ行く彼女を、抱きとめて、ただ必死にその名を呼ぶ、自分によく似た人。
『 ________ 』
それは知らない名。
それは聞き慣れない名。
でもなぜか、泣きたくなった。
それを振り払い彼女を再び見ればなぜか彼女の目も驚きにか見開かれていて。
その姿に胸の奥が震えた。
「すごい風だねぇ」
それを隠すかのように声を発して。
「新入生?」
その存在を知るために質問して。
「そっか。俺様は佐助。猿飛佐助。3年だよ。よろしくね〜。」
俺の名前を呼んで欲しくて名前を教えた。
さ る と び さ す け
でも、その呼び方は望んだものじゃないような、もどかしい気持ちになって、
そう呼ばれたときに、思わずそうじゃないといいそうになって。
・・・・・・・
いつものように呼んでくれと。
いつも、など記憶にないにもかかわらず。
叫びそうになった。
知らないはずなのに知っているかのような。
(どうかしてる。)
微かな自嘲を浮かべて、佐助は足を進めた。
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