ドリーム小説






恋というには幼いそれは 1













「先生。私背が高くはないので残念ながら前が見えないんです。席、誰かと代わってもらってもいいでしょうか?」




ざわりざわり

教室内の空気はすでに帰りを待ち望むそれ。

それでも、その空気の中は勇気を振り絞って言葉を放った。


その瞬間ぴたり、止む教室内の喧騒。

まるで獲物を狙う肉食獣のようにぎらり、煌く教室内の皆の視線。

それもそのはず、の席は窓側の一番後ろ。

正常な人間であれば誰もが望む最高の席。

仲の良い友人がなんてバカなことを、と憐みの視線を向けてくる。

だが、そんなことは関係ない。

背が小さいから前が見えないのは確かではあるが、それ以上にどうしてもこの席では嫌な理由があるわけで。


「そうだな、背が小さいと見にくいものだからな!誰か代わってやってくれるか?」

さらり、年の割にとても童顔な担任はにぱり、笑ってそう言った。

瞬間すぐさま名乗りを上げる幾つもの声。


そして同時に感じる痛いほどの横からの視線。


クラス中の男子も女子も、といったが少しだけ訂正。

女子の方がなんだかんだで押しが強い。

それというのも原因は十中八九この右隣の人物。

そしてがこの席を最も嫌う理由。

先ほどから痛いほどの視線を投げかけてくる男。

だがしかしはその方向をちらりとも見ない。

視ないのが自分のためである。

そう思っているからだ。



そして数多くの選択肢の中から窓際の一番前の席を選びぬき移動する間にもその視線はひしひしとにそそがれ続けた。


































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