ドリーム小説
恋というには幼いそれは 7
「おはようさん」
「・・・おはよう。」
教室に入ってきて、まっすぐにの元に向かってきた仁王。
席が後ろだから当たり前ではあるのだが、いかんせん、昨日のことがある。
まあ、どういうことかというと、はいま、かなり、恥ずかしい。
「これ、プリント。昨日返せんですまんかったき。」
「ん、平気やし。」
ひらり、差し出されたプリント。
目を見ずにうけとる。
が、なぜか仁王は手を離さなくて。
「・・・仁王君?」
「。」
呼ばれて、そっと視線をあげれば、どことなく、苦しそうな表情。
「俺んこと、ちゃんと見んしゃい」
小さく、つぶやかれたそれ、でもの耳にはしっかりと届いて。
ぶわり、体中が熱くなる。
顔が赤くなる。
「ご、めん・・・」
そんな苦しい顔をさせているのは自分なのかと思うと、胸が痛くなって。
目を見て、つぶやけば、ふ、と笑み。
それはいままでみていたものとは全く違うもので。
ぎゅう、と胸が、苦しくなった。
「___」
何か、仁王が言おうと口を開いた瞬間、がらりと教室のドアが開く音。
「おはよう!今日も一日元気かー!」
楽しそうな童顔担任が、元気よく入ってきたため、仁王が何を言いたかったのかは分からないままだった。
「、おひる。」
相も変わらず横暴な友人。
だがしかし、今日は珍しく外に行こうと言いだして。
断る理由もないためぺたぺたとついていった中庭。
ほどよく人もいない場所を見つけたため座り込みお弁当を広げる。
そしてなぜかまだお弁当に手をつける様子の見えない友人。
「さ、仁王君となにがあったの?」
が開けたお弁当を待て、というかのように持ち上げる。
にっこり、笑いながら聞かれたのはそんなこと。
仁王
「ぅえ、あ、ええぅ・・・」
今はその名前を聞いただけで赤くなるのが実感できて、思わずしどろもどろになる。
せわしなく目線をさまよわせる。
それをせかすことなく、友人はほほえましげに見ていて。
「。」
柔らかく自分の名前が呼ばれて、ようやっと友人を見る。
「仁王君、ずるいんよ。」
ぽつり、思わずもれたそれに、友人は一瞬虚をつかれたように止まり、笑う。
「どうずるいの?」
「いつもと違いすぎて・・・」
「かっこ、よくて・・・」
「きれい、すぎて・・・」
「ずるい・・・」
顔が赤くなってる実感はある。
でも、それを不快には思えなくて。
ふわり、温かな手が頭にのる。
やんわりと撫でられて、どきどきしていた心臓が少しだけ収まる。
ふにゃりとその手に甘えていれば、がさり、近くの茂みが揺れた。
「あ、れ?先輩?」
そこから現れたのは、昨日名前を知ったばかりの後輩で。
何してるんすか?そう言いながら首をかしげて、ちゃっかりの横に座る。
「切原、君。」
が驚いて名前を呼べば、なんですか?と問いかける。
どうしてそこから出てきたの?そう聞こうかと思ったのだが、なんだかそれはどうでもいいことのように思えて。
友人を見て、ぺこり、頭を少しだけ下げた。
「そういえば、先輩。」
の顔を見てきりだされた言葉。
切原はそれをとても楽しそうに紡ぐ。
「昨日はありがとうございました。」
「・・・へ?」
感謝の理由がわからず問い返せばにぱり、楽しそうな笑顔。
「仁王先輩の照れてる顔とかはじめてみたっす!」
にこにこ、切原の告げたそれに、友人が楽しそうに食いついた。
「本当に?あの仁王が照れたの?」
「はい、おもしろかったっすよ!」
きゃっきゃと話す二人よりも、は自分の頭を整理するのが精一杯で。
照れていた。
それがあまりにも彼には似合わなくて。
少し、混乱。
なぜ彼が照れたのか、理由が不可解すぎて。
「あ、先輩、今週テニス部練習試合なんっす。」
切原がを見て、眩しそうに笑った。
「よければ、また見に来てください。」
きっと、仁王先輩も喜びます!
其れだけいって、切原は手を振って去って行った。
どうしよう、そんなの心を見透かすように、とてもあったかい友人の笑顔。
「見に行っちゃえ。」
ふわり、柔らかい手が、背中を押した。
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