ドリーム小説
恋というには幼いそれは 8
授業が終わって、放課後。
担任に頼まれごとをしていて少しだけ遅くなった帰り。
教室に残ったままのかばんをとりに向かった。
人気のない校舎は静かで、少しだけ、さみしい。
かたり、
目的の自分の教室から小さな音。
誰もいないと思っていただけに少し驚いて。
そっと開いたままの扉から中をのぞく。
そこにあったのは、赤い夕焼けを反射する銀色。
部活の最中であろうか。
身にまとったユニフォーム。
手に持ったラケット。
それらどれもが彼をより一層引き立てて。
あまりにも綺麗なそれに、目が奪われる。
するり、彼の手が、小さく、動く。
忘れ物を取りに来たのだろう。
ラケットとは違う手に、ノートを持っていて。
そして、ラケットを持った手を、そっと、机に、のせた。
の机に。
さわり
まるでいとおしむように
いつくしむように
柔らかに、ゆっくりと、艶やかに
仁王の形のいい手が、机をなぞる。
どくり
体中の血が沸騰するような感覚。
まるで自分が撫でられてでもいるように、じわりじわり、背中がぞわりとして。
がたん
体がドアにあたって、小さく音を立てた。
それに、するり、仁王の手はの机から離れて。
ゆるり、その切れ目の瞳がに向けられて。
「まだのこっちょったんか?。」
まるで今までのことがなかったかのように、ふわり、変わる雰囲気。
それに声をかけることができなくて、慌てて返事する。
「う、ん、ちょっと先生に頼まれごとしとって・・・」
「なあ、・・・送ったるき、待っときんしゃい。」
ふわり、投げられた言葉。
それは予想もしないもので。
「もう、部活も終わるきに。一緒に帰らん?」
その返事を考えるよりも先に、首が動いていた。
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