ドリーム小説






恋というには幼いそれは 9

















じわりじわり、赤が減っていって、空は紺色をまとっていく。

二人の影は小さく大きく、存在感をひどく濃く映し出して。


会話がないわけではない。

ぽつりぽつり

何の意味もない内容を、話したり、返事したり。


気まずいわけじゃない。

ただ、その空間に、ひどく緊張して。


その低い声が、耳に滲む。

柔らかな色が、世界に溶け込む。




呼ばれる自分の名前が、こんなに輝いて聞こえるのは初めてで。


「仁王、君?」


ぴたり、名まえを呼んで立ち止まった仁王を振り返る。

先ほどとは違って、紺色に輝く銀色。

それはとてもとても綺麗で。


「俺んこと、もう、苦手と違う?」

そっと紡がれた言葉は予想しなかったもので。


驚いた表情を見てだろう。

くつり、微かに笑う声。

それに慌てて仁王を見れば、本当に楽しそうに笑っていて。


「苦手、ちゃうよ・・・」


ぽろり、零れた言葉は、仁王のまっすぐな視線に射抜かれる。


「ほんに?」

「・・・ほんまに。」


痛いくらいのその視線は、そのままの胸を貫くかのよう。


「そうか。」


次の瞬間、ふわり、鋭さは拡散して、ただ甘い甘い、柔らかな色だけが残って。


ぶわり、体中の熱が再発する。

滅多に見ないその表情に、どうしようもないくらい、心臓が音を立てる。



「っ、もう、私家、すぐそこやしっ、ありがとう、ここまでおくってくれて!」

それから逃げるみたいに、慌てて方向転換。


「最後まで送っちゃるよ?」


その申し出を丁寧に断り、さようならのあいさつをして、一歩。


「っ、今度の練習試合、見に行ってもいいやろか・・・?」

昼に切原に聞いた練習試合のことをそっと尋ねる。


「、が来よるなら、頑張るき。」


背中にその返事を受けて、自分の顔がふにゃり、緩んだのを感じた






























back/ next
戻る