ドリーム小説
さん
四月。
佐助兄さんに勉強を教えてもらったおかげ。
私はなんなく佐助兄さんと同じ高校に進学することができた。
佐助兄さんは私を見捨てることなく、優しく勉強を教えてくれた。
それだけでなく、夜遅くまで勉強していて次の日起きれない時は起こしに来てくれたし、夜はお夜食も作ってくれた。
体調を崩して寝込んだ時もお母さんの代わりに傍についていてくれた。
試験日にはバイクで会場まで送ってくれて、行ってらっしゃい頑張ってと応援してくれた。
佐助兄さんにもらった合格祈願のお守りは、受験が終わった今でも大切にしている。
合格した時は私よりも喜んでくれて、合格のお祝いにってご飯に連れて行ってくれたりして、
そう言う一つ一つの行為があったかくて、
そのたびに私の「すき」はおっきくなる。
だけど、佐助兄さんに私はきっと似合わなさすぎるから。
「入学おめでとう。入学祝い何がほしい?」
入学式の前日。
佐助兄さんがやってきて私にそう言った。
「ほしい、もの?」
「そう。受験、頑張ったからね。ご褒美。」
にっこり
私の心を柔らかく溶かすその笑みがまた、ひとつ私の心に痛みをもたらす。
それを見ないふりして、佐助兄さんの顔を見上げる。
あなたがほしい
喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込んだ
「この間ご飯おごってもらった。だからいいよ。」
そう返せばあれは合格祝い。今日は入学祝い、だなんてなんだかずるい言葉を吐いて聞いてはくれない。
「でも、佐助兄さん。教えてもらったのは私だから、私がお礼するべき___」
ひたり
続けて言葉を発しようとしていた唇に白くて長い、だけどどこかひやりとした指が当てられる。
「ねえ、そろそろ佐助兄さんって呼ぶのはやめない?」
その指を辿って佐助兄さんの顔を見上げるが逆光のせいで表情が見えない。
けれどもいつもと違う顔をしているのだけはわかって。
「・・・わかった。」
それからいちどもあなたの名前をよぶことができません
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