ドリーム小説



















ふわりふわり


あなたへの想いにさよならしたはずなのに、私の心はまだあなたを求めてしまうのです。


目の前は蒼い空。

あの日以来佐助兄さんには会っていない。


会わないようにしているから余計かもしれない。


断ち切ったはずの感情が、溢れそうになるのを、必死でこらえて。


ぎゅう、と目を閉じて縮こまる。

自分を守るみたいに、小さくなって。

弱い心を隠すみたいに。


ちょっとだけ、自分が不幸なふりをして、悲しみに浸っていたい。


そんなことを思っていれば、がちゃり、開かれた屋上の扉。


慌ててそちらを見れば、そっちも驚いたような表情をしていて。

「なにをしているんだ?小太郎。」

その後ろからは金色の彼女。

そうくれば、佐助兄さんも来るんじゃないかという不安に襲われて。

二人が屋上に入ってきて、扉は閉められた。

それでおしまい。

会いたくないと思ってるくせに、いざ会えないと、消失感に襲われて。


ぼおっと二人を見ていれば、そっと覗きこまれて。

「体調でも悪いのか?」

心配げに声をかける彼女は、同性でもうっとりするくらい美しい。

「大丈夫、です。」

一緒にいれば、まるで自分という存在が、なくなってしまいそうな感覚に襲われる。


「佐助、呼んでこようか?」


そっと出された提案。



佐助


あなたはそんなにも簡単にその言葉を発することができるのですね。

はしりと差しのべられた手をちからなくはたく。

小さな小さな抵抗は、それでも彼女に届いたようで。

どんなに嫌な女の子でしょう。

わかっているけど、溢れるのはどす黒い感情。

佐助兄さんは、この人が好き。

御似合いだけど、


だけど、ずるい。


ずるい、よ。


私が小さなころからずっといたのに、それなのに、どうして、どうしてっ、


ごちゃごちゃな感情が、いやになって、また涙腺が緩む。

こんな自分が嫌なのに、どうしようもなくて。


ふわあり


参度目のその感覚。

目を開ければやっぱりこた先輩で。

ぎゅう、と強く強く抱きしめられる。

それが痛いのに、嬉しくて、

温もりがあったかくて。


そっと頭に乗せられた綺麗な手のひら。

そこにはとてもとても綺麗に笑う彼女がいて。

「上杉先生って、知ってるか?」

優しく優しく撫でられるそれが気持ちよくて、目を眇めて話を聞く。

こくり一つうなずけばふわり、さらに花がほころぶような笑み。

「私はそのお方をお慕いしている。」

驚いて見開いた瞳。

その先には赤く頬を染めている。

それはぞくりとさせるような妖艶な笑み。

「佐助と私は付き合ってなどいない。」


それに、心のどこか安心する自分がいた。


「佐助が好きなのは私ではない。」


うそでしょう?

私を慰めるためのウソでしょう?


そうは思うのに、その言葉が嬉しくて仕方がなくて。

ぎゅう、とこた先輩の背中に手をまわして縋りつく。


本当?それは。

本当のことなの?


信じてもいいの?


再び撫でられて、その熱は私から遠ざかる。

それを視線で追えば、ゆっくりと屋上から出ていく金色。




そして、すれ違いで現れる、





橙色










あなたのことばを、信じてもいいのでしょうか














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