ドリーム小説
配達ギルドのあれこれ
「お嬢、歩くの早いねぇ」
「!?・・・・・・レイヴンさん、どうしたんですか?」
港町へ続く道を歩いていれば気配もなく、ひょい、っと何かに顔をのぞき込まれた。
ばくばくと音を立てる心臓をそのままに声の発信源を見れば、ぼさぼさ頭の猫背の紫。
とてつもなくびっくりした。
何事かと思った。
もう関わりたくない。
そう願いながらヘリオードを早々に出発したというのに。
代わりにこの人に会うとは思わなかった。
想定外すぎる出会いじゃないですか。
「気づいたらダングレストにいないんだもん。追いかけてきちゃった」
へらへらと笑う表情はいつもと変わらない。
内容もいつものような軽いもの。
けれど、確かに私に用事があったのだろう。
足を止めて、彼に向き直る。
そうすれば、彼はへにゃり、また笑って。
「配達ギルドに、ドン直々のお願いがあってね」
ごそり、懐から取り出されたのは一通の書状。
正式にドンさんの印が押されている。
「これを、ノードポリカのベリウスに届けてくれない?」
ベリウス
それは、ノードポリカのを作りあげ”戦士の殿堂”を束ねる統領の名前。
私は__一度だけ、会ったことがあるのだ、そのベリウスに。
新月の日にしか会わない、その情報は得ていたから。
タイミングを見計らって会いに行ったのだ。
会える確率は限りなく低かったけれど、それでも、私は配達ギルドだから、頼まれた物を届けるために。
たまたま、その日、来客が少なくて。
会ってもいいと、そう言ってくれた彼のひとは__想像していた姿ではなかったけれど。
見た目に反してとても優しいひとだった。
一度、ドンに話したことがあるのだ。
ベリウスに会った、と。
今回私に依頼されたのは、私がベリウスと面識があるから、だろう。
「ドンさんからの依頼なら、断るわけにも行かないですねぇ〜」
ノードポリカにも用事はあったから丁度いいだろう。
すっ、とレイヴンさんに手を差し出す。
そうすれば、なぜか彼は不思議そうに首を傾けて
「ん?」
「ベリウスさんへのお届け物、お預かりします。知ってると思いますけど、他を回ってからなので、ちょっと時間かかりますよ?」
なぜ不思議そうな顔をされたのかわからず、言葉を紡げば、ああ、とばかりにレイヴンさんは手紙を鞄にしまった。
なぜ?
「俺様も一緒に届けるから」
「ん??」
ぽん、っと肩を叩かれた。
「俺とお嬢で届けろ、って依頼なんだよね〜しばらくよろしくね、お嬢」
まさかの二人旅開始のお知らせだとは思わなかった。
配達ギルドと二人旅
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