ドリーム小説
配達ギルドのあれこれ
「全員、気をつけ!!」
響いたその声。
そうじゃないと思いたかった。
知ってはいたけれど、確信ではなかったけれど、それでも、それが真実だとたどり着きたくはなかった。
__ねぇ、レイヴンさん
無事に間に合った新月の夜。
暗闇の中姿を現したベリウスの姿に、皆が各の武器を構える。
罠か、と姿勢を低くする彼らをそのままに、皆の前にでて、へらりと笑う。
「ベリウスさんお久しぶりです〜毎度ご贔屓にしていただきありがとうございます〜配達ギルド”黒猫の足”です〜」
「久しいの、配達ギルド」
柔らかな声がふってくる。
前回は私も驚いたのだ。
初対面なら驚かないはずがないだろう。
「わらわがノードポリカの統領”戦士の殿堂”を束ねるベリウスじゃ」
自己紹介をするベリウスさんに口々にかけられていく質問たち。
律儀に答えていくその様は、まったくもって魔物らしくはなく。
交わされる会話を聞き流しながら、レイヴンさんがベリウスさんに手紙を渡すのを見届ける。
これでドンに依頼された依頼は完了だ。
__私ついて行く意味あったかどうか、甚だ疑問だが!!
そのまま彼らがベリウスさんに向ける質問を聞き流していく。
人魔戦争だとか、フェローだとか、満月の子だとか、私には全く意味のないことで__
「何の騒ぎだよ、いったい」
扉の外から聞こえてきた、金属音にレイヴンさんが声を上げる。
それは、武器同士がこすれ合う音と類似していて。
開かれた扉の先、そこにいたのは武器を構えたギルド”魔狩りの剣”だ。
彼らの武器はまっすぐにベリウスさんに向けられていて。
目的が何かは一目瞭然。
魔物に恨みを抱く彼らは、こちらの話を聞く様子も見せず。
魔物は悪だと叫ぶ。
ほら、ユーリ。
彼らは自分たちを正当化して、魔物を狩ることを正義だと信じている。
これほど楽な生き方は、ないのに。
「こやつらはわらわが相手をせねば抑えられぬようだ。そなたら、すまぬがナッツの加勢にいってもらえぬか」
ベリウスさんの言葉に一瞬だけ抵抗した彼らは、それでも指示に従って闘技場に降りていく。
ついて行くかどうか、一瞬迷った私の腕を掴んだのはレイヴンさんだった。
「お嬢もおいで、守ったげるから」
それがどういう思いから来たものかはわからないけれど、足手まといにしかならない私を理解して手を引いてくれたのだ。
従わない手はない。
その導きのまま向かった闘技場では、多くの”戦士の殿堂”のギルド員たちが倒れていて。
こちらに向けられる攻撃を、レイヴンさんは目の前でかるくいなしていく。
__そこからは、どこか画面の向こうで、映画を見ているように、ことが進んだ。
すごい音を立てて上から落ちてきたのはベリウスさん。
傷だらけのその体に、回復の術を使ったのはエステルさん。
その回復の術にか、悲鳴を上げるベリウスさんは自我を失ったかのように暴れ回る。
攻撃することでベリウスさんを止めたユーリたち。
そのベリウスさんが、エステルさんに、言葉を放ったあと、ゆっくりと、私を、みた。
「すまぬな、配達ギルド、そなたが望む、応えを、わらわは、見つけだすことが、できなんだ」
息も絶え絶えになりながら、伝えてきたのはそんな言葉。
そんなの、見つかるはずがないもの。
当然だというのに。
申し訳なさそうな表情で、心残りだとでも言うような声色で。
「そなたを、元の場所に、戻してやりた、かった、」
まっすぐに私を見つめて言うものだから、何も、言葉が出てこなくって。
ひときわ輝くと、ベリウスさんはゆっくりと姿を消して。
その場に残ったのは光り輝く大きな宝石のような、何か。
”我が魂、蒼穹の水玉を、我が友、ドン・ホワイトホース、に”
響いた声にゆっくりとそれに近づいていった。
「ベリウスさんの、最後の依頼だから、私に運ばせてくれないですかねぇ」
「わかった、頼む」
ユーリの応えに礼を言って、その輝きを胸元に引き寄せた。
配達ギルドとベリウスの魂
back
next
戻る