ドリーム小説
配達ギルドのあれこれ
ベリウスさんの魂を奪おうとする”魔狩りの剣”その攻撃を避けながら、レイヴンさんは先ほどと同じように私の手を引いてくれて。
そんな中、闘技場に乗り込んできた騎士団までもが、それを奪おうとしてくるものだから。
パティちゃんが投げつけた煙幕が目くらましになって、退路を確保した。
そのままレイヴンさんに手を引かれ闘技場を脱出する。
先ほど”魔狩りの剣”が言っていた__ベリウスを倒すのは、歴とした依頼だと。
それを依頼したのは__
「ハリー!」
レイヴンさんの鋭い声。
彼が向かった先には、ドン・ホワイトホースの孫、ハリーの姿。
いつもどことなく強気な彼は、今顔を真っ青に変えて、立ち尽くしていた。
__彼が、わからないはずがない。
ギルドに所属して10年。
そのわりに、ギルドのことに疎い私ですらわかるのだ。
ギルドの首領の命の代償が、一介のギルド員で収まるものでは、ないと。
私とハリーをつれて、船に乗り込んだレイヴンさん。
突然乗っていた私たちにぎょっとした面々だったが、ハリーをつれての乗船にちゃんと許可をくれて。
そして動き出した船の魔導器を__ジュディスさんが、槍で、一突きして、壊した。
説明を求めるモルディオさんたちの声に、ジュディスさんは言葉少なに返すと、突然現れた大きな魔物の背中に乗って、飛び去っていった。
何が起こっているのか、皆が呆然とするしかなかった。
モルディオさんが魔導器を修理している間、それぞれが各の時間を過ごしていた。
目的の人物を見つけてそばによる。
「レイヴンさん__」
「どうした、お嬢」
へらりとしたその笑みは、いつもに比べて覇気がない。
横に座るように促されたから、彼のそばにそっと腰を下ろす。
「困ったことに__ベリウスさんの命に釣り合う代償が、一つしか思い浮かばないんですよねぇ」
ぽつり、つぶやいた私に、レイヴンさんは表情から笑顔を消した。
「ま、そういうこったねぇ」
否定されることはないと思っていた。
だから、やっぱりなぁ、という感情しかなくて。
「仕方がない、って思いたくはないんだけどねぇ」
もう、仕方がないのだ。
何も、私たちにできることは、ないのだ。
私としては__頼まれたままの仕事が、一つ、片づくその時が近づいた、というだけで。
「そういえば、お嬢、ベリウスに最後言われてた言葉の意味__聞かない方がいい?」
レイヴンさんからの問いかけに、今度はこちらがへらりと笑う番だ。
聞かない方がいいか、その問いかけだから、答えなくてもいい、はずなのに__なぜか、言葉がぼとりと、落ちた。
「ベリウスさんにも、聞いたことがあるんですよ__私の捜し物のこと」
大切なあの場所への帰り方を。
「私の家族がいるところへの、帰り方、を」
「そっか」
深く聞くわけでもなく、茶かすでもなく。
ただ、柔らかくレイヴンさんはほほえんで。
「じゃ、おっさんをお父さんだと思って飛び込んでおいで〜」
へらりと笑って言うものだから、なんだか、いろんなものがどうでもよくなった。
「ぅお、」
その広げられた紫色に、全力で飛びついてやる。
ユーリほど背はでなかくないけれど、それでも男の人だなぁ、と感じるその逞しさ
そう、思った以上に、逞しくて
なだめるように背中に回された腕。
結果、海風に吹かれてひやっこくなっていた体中がぬくもりに覆われて。
まって、いつぶりだ、こんな風に人の温もりに包まれたのって。
冗談で、飛びついた、はずなのに、
こんなはずじゃ、なかったのに
「う〜ん、お嬢柔らかい〜」
ぎゅうぎゅうと痛くはないほどに強くなる腕。
すりすりと頭にすり寄られる感覚。
ぶわり、あがりだした熱は、収まる気配を見せず。
「どう?おっさんの腕の中」
「心臓ばくばくで、おちつけ、ないのに、き、もちよすぎて、どうにかなりそうです」
とか返した私は完璧に頭が沸騰していたと思われる。
配達ギルドと暖かな抱擁
「__おっさん、配達ギルド、真っ赤になってっけど__セクハラか?」
「冤罪!!それ冤罪だから!!」
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