ドリーム小説
配達ギルドのあれこれ
ダングレストについて、ハリーをつれてドンさんの元に向かうレイヴンさんについていく。
そうして、たどり着いた先、仁王立ちするドンさんの前に立って、へらりと笑った。
「どうも、毎度おおきに、配達ギルド、黒猫の足です〜。ご用命とあれば、例え火の中水の中。ただし配達物の安全は保障しかねます〜燃えない紙、濡れない紙でどうぞ〜。天の上地の下、はたまた砂漠の中だって。運んで見せます。運ぶのは、荷物だけにあらず。信用も一緒にお届けします〜どうぞ配達ギルド黒猫の足をご贔屓に〜」
いつもの口上は、震えてはいなかっただろうか。
きっと、私がこの人とこうやって会話できるのは、これで最後になるだろう。
”戦士の殿堂”の統領ベリウスに見合う命は__”天を射る矢”のドン・ホワイトホースのものだけ。
重々、わかっているから。
ぐしゃり、大きな手のひらが私の頭をかき混ぜる。
その感触を味わいながら、ベリウスに頼まれたものをそっと渡した。
それを見てすべてを悟ったようにドンさんは柔らかく笑って。
「最後にあいつの想いを届けてくれて感謝する」
その言葉に私は笑顔を返せていたのだろうか。
「すまねぇな、お前の望む情報は最後までみつけられないままだった」
「お手間とらせてすみません。気にかけてくださってただけで、十分です」
この人も、ベリウスさんと同じことを言う。
そんなこと気にしている時じゃないだろうに。
「お前とこの首領を、頼んだ__いまだにあいつは不器用なままだからな」
我がギルドの首領の数少ない友人の中に、この人は名を連ねていて。
不器用な我がギルドの首領のことを、いつだって心配してくれていて。
「ドンさんの頼みなら、断れないですよねぇ__もちろんです。私がこの場所に存在している限りは、になりますけれど」
「かまわねぇよ」
ぐしゃり、最後に惜しむように押しつけられたてのひらは、とても暖かかった。
ここからは、私が立ち入れる話しではない。
ゆっくりと退出の挨拶をして扉へと向かう。
「__」
呼ばれた、それは、私の名前。
この世界で限られた人しか知らない、異質な名前。
響きも呼び方も、書き方でさえもこの世界には存在しないそれを、ドンさんは確かに呼んだ。
恐る恐る降りむけば、今までみた中で一番柔らかな笑顔を浮かべるドンさんがそこにいた。
「達者でな」
私はそれにいびつな笑顔を返すことしかできなかった。
配達ギルドと最後の挨拶
翌日、ドン・ホワイトホースは還らぬ人となった。
back
next
戻る