ドリーム小説







配達ギルドのあれこれ 
















しばらく姫を休ませる。
そう言ったアレクセイさんは、お姫様の世話をなぜか私に任せた。

彼女を閉じこめる結界は一時的になくなり、それでも自ら体を動かせないほどには弱った彼女にはなんの意味もなく。
お姫様が眠るには少々不釣り合いな簡素なベッドに彼女は横たわっていて。


”  殺して  ”


何度もその言葉が耳に響く。
バカみたい。
人を傷つけるのが怖いからって、自分を殺してもらうことを望むなんて。
__人を傷つけてでも、自分が助かる道を探せば、自分だけが助かればいい、ってそう思えば、どんなに楽か。

「馬鹿なお姫様」

横たわったままの彼女は眠っているのか、意識がないのか。
ただ静かに胸が上下するだけ。
眦からほとほとと滴がこぼれていくだけ。

それを拭う人など、この場所にはいないというのに。

ゆっくりと枕元に腰を下ろす。
微かに上下するその感覚にも、お姫様は目を覚ます様子はなく。

桃色の髪にそっと触れる。
私の大切な世界で、私の生まれた国で、美しいともてはやされる花のごとく。
鮮やかすぎることのない、柔らかな色合いのそれ。
指通りのよい、よく手入れされた髪。
まるでこのお姫さまのように。

「ころして、だなんて、甘えられる相手がいるから、いえるんだよ」

殺すことでおう咎を、背負ってもいいと、そう思ってもらえるような相手が、いるからこそ。






この世界で死ねば、あの場所に戻れるのだろうか





何度も、思わなかったわけじゃない。
でも、それは最後の手段だと。
全部やり尽くしてから、探し尽くしてから。
そう思っていたから、今でも、そう思っているから。

だから、私は、まだ死ねないの。



”  殺して  ”

だというのに、その言葉は深く突き刺さったまま、抜けない。
彼らの、ユーリたちの視線が私を見なかったことに、傷ついてなんか、ないのに。


あの場所に、あの神殿で失われたであろうあの人が、いたことに、ほっとした、私がいたなんて、




そんなの、気のせい。










配達ギルドと眠り姫













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