ドリーム小説







配達ギルドのあれこれ 














「__なぁ、ダミュロン」




その名前は、だあれ?
そう聞くには何度も目にしてきた名前で。

その人物は、どの人?
そう尋ねるにはわかりすぎている視線があって。

私を包んだままの腕が、微かにふるえた。

「__その名前を知っていて、その胸に魔導器が入っている、ということは__」

言葉も、どこか堅く、真実を知るのを恐れるようにふるえていて。

けれど、それより先を聞くことを、彼はしなかった。
一度、私を包んでいた腕が強くなったかと思えば、ゆっくりとはずされる。


「悪いけど、その名前の人物は、もういないのよ」


ゆっくりと見上げた顔は、レイヴンは、ダミュロンと呼ばれたその人は、今までみた中で一番、柔らかい表情をしていて。





その名前は、何度も目にした。
鞄の奥底、少しかすれたインクの文字。
一緒に届けてほしいと、いくつも押しつけられたメモの数々。

受け取る相手の存在しないその手紙は、私と同じように行く先のないその手紙は、いつか消えるだけのさだめだと、そう思っていたのに。

「__ダミュロン・アトマイス?」

つぶやいたそれに、少し驚いた表情を浮かべた彼は、困ったように私の頭に手をおいた。

「それは、もう死んだ男の名前なのよ」



ああ、見つけた。
見つけてしまった。

この手紙の届く先を、見つけだしてしまった。





私の世界への帰り方は、見つからないままだというのに。






配達ギルドと手紙の行く末











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