ドリーム小説







配達ギルドのあれこれ 















父がいた。
母がいた。
姉と、やんちゃな弟と。
いつかマンションから一戸建ての家に住みたいね、そんなささやかな夢を抱く、ふつうの家庭だった。

転機は、15の時。

いつものように家を出ただけの私は、気がつけば見知らぬ場所に立っていた。
携帯電話も使えない、GPS機能も作用しない、そんな世界にいた。

私を拾い上げたのは、片目にモノクルをかけた黒髪の男性。
私のもつ携帯電話に興味を持ったその人は、その特性を説明させる代償として、私を家においてくれた。

見知らぬ景色。
慣れない習慣。
異なる文字や歴史、地名。

元の世界へ戻ることを願う私に、彼は辞書を放り投げて。
それを覚えれば、世界を旅すれば、どこかに見つかるだろう、だなんて。
確実性も何もなかったけれど、彼が言ったから。

若い、純粋な頃の私は必死で覚えて、世界を見て回ることに決めた。

だから、配達ギルドとして動き回るのは、実は副産物。

私を養ってくれる彼に、代わりに渡すのは私の世界の知識。
あの世界が私を放り出したのだ。
それくらい、かまわないだろう。
それから、彼の面倒を見ること。
__彼は、私がいないあいだどうやって暮らしていたのか不安になるくらいに生活力が皆無だった。

彼によって、私は様々な人と知り合った。
ギルドの首領に帝国の騎士団長。

どうやらそれは彼なりに、私の捜し物の手助けをしてくれていたようだと、知ったのは随分後だったけれど。

ここにきたのは約15の時。
それから10年、私はこの世界で暮らした。
あの世界に戻るための方法を求めながら。
見つかるかどうか、わからないけれど、見つからないと言う証拠がない限り、探し続けようと決めていたから。
見知らぬ町に行き、人が足を踏み入れぬ森を分け入り、魔物が徘徊する建物を歩き回り。


見つからないまま、それでも、探し続けていた。



いつか、がくることを、願って。
願うことしか、できなくなって。


そんなときに、出会ったんだ。

漆黒を纏い自ら進んで闇を背負う、それでいて光のような眩しさを秘めた青年に
自らを省みず救いたいと手を伸ばす、真っ直ぐで優しすぎるお姫様に
逃げる強さをもちあわせ、見た目にそぐわぬ知識を秘めた小さなギルドの首領に
魔導器に全てを捧げ生き、魔導器以外に抱いた感情に迷う魔導少女に
友と共に世界を巡り、一人世界の行く末と戦おうとしていた竜使いに
失われた記憶を求め、自らの存在を疑いながらも、前を向こうとする海賊に
光を纏い自らの手で世界を変えようと、真っ直ぐに進む真面目で頑なで強い騎士に

それから__

かつての自分は死んだのだと、ただ操られるままに二つの顔を使い分けた器用で不器用な男の人に


彼らとの出会いは、確かに私にとって転機であった。








配達ギルドとひろいぬし







ぽろりぽろり

落ちていく、記憶のかけらに気づかぬふりを、して











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