ドリーム小説
配達ギルドのあれこれ
星喰みを倒しに行くと言って出て行った彼らには、長く会っていない。
今まであんなにも望まぬ時だろうとエンカウントしてきたというのに。
あれらが嘘のように、誰とも出会わない。
出会わないけれど、行く先々で漏れ聞く彼らのギルドの名前は、彼らが元気でいることを教えてくれて。
そんな中、それは、起こった。
「首領!!生きてますか!?」
アスピオに近い、森の奥。
そこに住まう我らがギルドの首領。
安否の確認に向かったのは、アスピオの町が壊れ、そこから空に浮かぶ建物ができあがった三日後のことだった。
アスピオに向かう道はどこも封鎖されていたため、獣道を進んだため、それだけかかってしまった。
やっとたどり着いたいつもと変わらないその家に、全力で飛び込めば__
「おや、配達ギルド、おひさしぶりデース」
いつものウサギエプロンに前と同じお皿とお玉を持ちながら声をかけてくれたのはイエガー。
「騒がしいな、もう少し静かに入って来いや」
キャスター付きのイスで離れたところの資料を手にして机に戻っていく最中の首領。
「ちょうどよかったな」
「これからご飯なのよん」
イエガーの手伝いをする二人の女の子。
それから__
「久しいな、配達ギルド。加減はどうだ?」
平凡な部屋に似合わない__否、魔導器であふれる部屋にはいささか似合っている一人の銀髪。
常に身につけていた鎧はなく、質素な木のイスに座る様は、かつての威厳を少しもまき散らすことなく。
私を目にして、何の気負いもなく、彼は手を挙げた。
「__アレクセイさん何してるんです??」
地下牢に捕らえられていると聞いたんですけど??
私の質問は、机の上に並べられた料理によって、遮られた。
曰く、今現在帝都は多大なる人員不足に襲われている
さらには古代都市タルカロン__あの空に浮かんでいる建物のことらしい__が出現したため、城は大混乱に陥っている。
その隙に外に出てきた、らしい。
かって知ったる帝都の城だ。
アレクセイさんができないはずもない。
でもそれってつまり__脱獄じゃないですか。
思わずじとりとした目を向ければ、彼は朗らかに、笑った。
それこそ、ここ始めてみるような、柔らかな表情で。
「正直、沙汰が下るまで大人しくしているつもりだったのだが__」
食後の紅茶を一口、口に含んだアレクセイさんは続きを紡ぐ。
「星喰みの対処、それから古代都市タルカロンに私の知識は必要だろう。私は__この世界そのものを滅ぼしたいわけではなかったからな」
それからもう一つ、と前置くと、彼はまっすぐと私をみた。
「の異質さが失われているととあるルートで聞いてな」
かちゃり
小さな音をたててティーカップをおいたアレクセイさんは私に手を伸ばして、空中に何かを展開させた。
「なるほど__」
小さくアレクセイさんがつぶやく。
「。前も言ったと思うが__おまえが、この世界に無関係なおまえが、この世界に巻き込まれる必要などない」
私にはわからない何かを操作しながらアレクセイさんは何かを考えるように。
「だが__確かにおまえの体は、以前よりもこの世界に馴染んでしまっている__それこそ、この世界の物と変わらないくらいには」
ゆっくりと装置を閉じたアレクセイさんの目が、私を射抜いた。
「今一度尋ねよう。元の世界に戻ることを、願うか?なれば、これから先、私はそれを第一優先で動こう」
もどることを、ねがうか
その質問に対する答えを、私は、今の私は一つしか持っていない。
「もどり、たい」
あのせかいへ
「かえりたい」
あのばしょへ
「私がすべて、忘れてしまう、その前に」
薄れていく記憶のなか
「忘れたことすら忘れてしまう、そのときまでは」
私がすべてを忘れるまでは、願っていたいんだ。
私の言葉に、アレクセイさんはゆっくりと頷いて。
私の前に、膝をついた。
「あのとき、あの場所で私は一度死んでいる」
紫色の彼のように。
「君によって救われた命だ__彼らにかけて、君のために生きても良いかと、そう思っている」
手を取られて、お姫さまにするように引き寄せられて。
私の手がゆっくりとアレクセイさんの額に導かれた。
レイヴンとは違い、誓うように、祈るように。
「君が望む限りは、君の願いの通りに」
配達ギルドと忠誠の騎士
お姫様にひざまずく騎士のように
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