ドリーム小説














尾浜勘右衛門
私のかよう高校の一つ上の先輩。
成績優秀、運動神経抜群、しかも美形。
その割に気負わない性格のため、下級生、上級生問わずに人気もの。

「なんかあの笑顔見るといろんなことが仕方がないなって気分になるよね!」
「普段はすごくまじめで学級委員なんかもしてるから取っつきにくいかと思ってたけど、笑った瞬間すごくかわいいよね!」

とは友人談だ。



だが、まさか、誰が想像できただろう。

そんな人気者の先輩が突然兄となるなんて。









二、兄ができました。









「いやいやいやいや・・・」


ここがちゃんの部屋だよ。
そういって案内されたのは女の子らしいふわりとした雰囲気の部屋。

なぜこの部屋にもうすでに自分の私物があるのか、それはもう面倒だから問わないことにする。

そのふっわふわなベッドの上、未だに収束しない頭の中、新しい父よりも新しい家よりも、考えるのは新しい兄のこと。

学校で平々凡々な生活を充実してきた自分にとっていきなり人気者の先輩が兄として登場、さらに同じ家で仲良く暮らす。それはとんでもない衝撃であった。


「ええぇえぇ・・・・」


部屋にバカほど置いてあったたくさんのぬいぐるみ。
(かわいいしぬいぐるみは好きだから別にいいのだが。)

そのなかでも特に大きなそれをぎゅうぎゅうと抱きしめながら混乱を収めるために声を上げる。

が、まあ、成果は見られず。


と、扉がノックされる音が部屋に響く。

家では母と二人だったためノックをする、という習性がなかったため驚いて思わず止まる。

「寝てるの?」

返事ができずにいると、かちゃりと音をたてて扉が開かれる。

ちょっとびっくりして思わずぬいぐるみを盾にするように自分の体を後ろに引っ込める。

そしてぱちり、合う瞳。

見つめあって数十秒。

にぱり、そのきれいな顔がきれいに笑む。


「そのぬいぐるみ気に入ってくれたんだね。俺が選んだんだよ?」

なんのことかと、考えて、自分がぎゅうぎゅうと抱きしめて盾にしているぱんだのぬいぐるみのことだとたどり着く。
ぬいぐるみをだっこしているのが恥ずかしく感じてあわててそれをぺいっとベッドの上に放る。

部屋に入ってきたその人に思わずびっくりしてベッドの上でさらに一歩下がればふにゃり、笑みが苦笑に変わる。

って呼んでもいいかな?俺のことは好きに呼んでいいよ。」

それ以上距離をつめることなく、その人は言葉を紡ぐ。



自分の名前をそんな風に男の子から呼ばれることなどなかったので、ちょっとびっくりする。
でもそれよりもなによりも、なんて呼べばいいのか、非常に困るんだが。

「ええと、尾浜先輩・・・」

「うん、却下。」

なんて呼べばいいのか、思いつかなくて、思わず学校出よく聞く呼び方を使ってみる。

笑顔であっさり却下されたが。

「せめて勘右衛門とか勘ちゃんとかお兄ちゃんとか。」

綺麗な綺麗な笑みで提案されるそれら。
だがすぐにそんな呼び方ができるわけもなく。

「まあ、少しずつでいいから慣れていってね。」

答えられずにいれば、綺麗な笑みが苦笑に変わる。

なんだかそれにいたたまれなくなりながらも呼べず、うつむく。



呼ばれる自分の名前。
しばらくは慣れることなどできないであろうその響き。

ゆっくりと顔を上げれば、ふわり、柔らかな笑み。

「晩ご飯、食べよう。」

差し出された手。
思わずその手を見て止まる私をそのままに、じっとこちらをみながら私の動きを待ってくれるその人。

ゆっくりと手を伸ばしてその手のひらにかぶせれば、ふわり、とてもとても綺麗に笑う。

「あらためてよろしくね、。」























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