ドリーム小説
あ、やばい。
そう思ったときにはもう遅く。
体中から力が抜けて視界が真っ暗になって。
遠くで滝の声が響いて、体に広がったぬくもりを最後に意識は反転した。
七、いつかは兄と呼べるかな
次に感じたのは額への冷たさ。
そしてゆるりと頭をなでる暖かなもの。
そっと開いた瞳の先。
広がるのはここ最近ようやっと見慣れてきた天井。
誰かの、手。
「」
呼ばれたのは自分の名前。
ゆるりと視線を動かせばそこにはほっとした表情を浮かべる兄。
「覚えてる?体育の授業中に倒れたんだ。今日はもう帰った方がいいってことで家に連れて帰ってきたんだけど、大丈夫?」
優しい声。
温かい手。
自分の緊張の対象であるはずのその人。
それでも今はそのぬくもりがうれしくて。
生活が変わってからなかなかきちんと寝れなくて。
体にたまった疲れが一気に出たのだろう。
ぼおっとする頭でそのぬくもりにそっとすがるように手を伸ばす。
ごめんなさい、ごめんなさい。
「迷惑かけて、ごめんなさい。」
そういえばむすりとした表情を向けられた。
「。俺とは家族なんだよ。こんなこと迷惑なんて思ってない。そんな風に言われた方が迷惑だよ。」
「ごめん、なさい、」
はじめてきく低い声にぞくりと背が冷える。
その瞳が揺れてため息をつかれる。
それに再びからだが震える。
「ちがうよ、。」
そっと宥めるように頭をなでられる。
それにゆっくりとそちらを見れば困ったように笑われて。
「もっと違う言葉を聞きたいな?」
「・・・ありがとうございます。」
「敬語?」
「・・・ありがとう。」
お兄ちゃんと呼ぶことはまだできないけれど、それでも少しだけ近づけた気がした。
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