ドリーム小説
「そうだよね、ただの知り合いだもんね。安心して。もう君に関わらないから。もうお弁当も何も作らなくていいよ。」
せっかく近づけたと思ったその距離は、あっけなく離れて。
笑顔でつき放たれた言葉に呆然とすることしかできなかった。
八、近づいたと思ったのは一瞬だけで
「ねえ、ちょっといい??」
とある日の昼休み。
教室で滝たちと昼を食べ終わって、談笑していたところに訪ねてきた女子生徒たち。
ネクタイの色から上級生な彼女たちはどう見ても友厚的には見えず。
「、」
立ち上がったを滝が止める。
「なんか呼ばれてるみたいだしね、行ってくるよ。」
その手を外して先輩方のところへと足を進める。
そのままここではなんだからと連れて行かれたのは階段の踊り場。
まあ見事に人目のつかないところだ。
「何かご用ですか?」
さっさと終わらせて教室に戻ってしまいたい。
そう思ったため単刀直入に問う。
向けられた視線は胡乱げなもの。
いやにひどい嫌悪の視線に冷や汗が流れる。
「あなた尾浜君の、何?」
まっすぐに発せられた言葉はそんな言葉。
とっさには理解できなくて思わず首をかかしげた。
「へ?」
「だから、あなた尾浜君の何なの?」
その答えにじれたように言葉を重ねられて。
「この間突然窓の外に飛び降りたのよ、尾浜君。」
「何事かと思ってみたらあなたを抱きかかえて保健室に向かうじゃない。」
「?尾浜君いろんな人に優しいけど、人に触れることってほとんどないのよ?」
「そんな彼があなたを助けにいくって、いったいあんた何なの?」
気がつけば家のベッドの上で寝ていたあの日。
そんなことがあったとは知らなかった。
目の前のことを忘れてあの日のことを思い出していればぐいと惹かれた腕。
「ちょっと、話聞いてるの!?」
先輩方に腕を捕まれて詰め寄られて。
慌てて意識を戻せばその人たちは大変怒った表情をされていて。
「ええと、ですね」
正直に、正直に言おうと思った。
尾浜勘右衛門は兄だ、とそう言おうと思った。
けれどもどうせならば初めて兄と呼ぶのであればあの人の前で。
そんなことを思った自分が馬鹿だったんだ。
「尾浜先輩は、ただの、知り合い、です。」
兄と呼ぶ以外の関係性なんかうまく見つからなくて、この人たちに先に真実を伝えるとかそんなのいやで。
口に出したその言葉。
まさか、それを、聞かれていたなんて。
「そっか。は俺のことそう思ってたんだね。」
一番聞いてほしくなかった人に。
にっこりと笑われた。
きれいなきれいなその笑みは、ひどく冷たいもので。
「そうだよね、ただの知り合いだもんね。安心して。もう君に関わらないから。もうお弁当も何も作らなくていいよ。」
「、どうしたんだ??」
滝が心配して探しに来てくれるそのときまで、冷たいその笑みが頭から離れなかった。
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