ドリーム小説
ずっと自分が身を置いていた場所はとてもとても小さくて。
開いた襖の先、そこは広くて。
一歩踏み出した先、見えない世界が広がっている気がした。
医務室かその横の部屋か。
基本的に私がいるのはその場所で。
それ以外の場所に居場所はないし、それ以外の場所では罠も仕掛けてあると聞いたから。
本当は、光あふれる校庭に出てみたい。
たくさんの声が聞こえてくる食堂という場所で食事をしたい。
でも、それは叶わぬことだとわかっているから。
「この薬は棚の右上にあります。」
眼鏡が特徴的な乱太郎君。
彼は私に様々なことを教えてくれる。
私が持っていなかった薬の知識。
備品の場所。
手当ての方法。
其れだけでなくこの世界での生活方法まで。
私はとても優しい彼に、とても感謝していて。
同時に柔らかな笑みに癒されてもいて。
生ぬるい、そんな空気に身を預けてしまっていたんだ。
「あ、」
薬湯の作り方を乱太郎君に教わっていれば、突如小さくもらされた声。
何事かと顔をあげれば乱太郎君はすごく優しい瞳をして、医務室の出入り口へと視線を向けた。
ふわり、笑みが漏れるそれは、とてもとても温かくて。
そんな視線、最近はずっと向けられていないことが、ひどくむなしく感じた。
「乱太郎!」
からり
突然開かれた襖の向こう。
太陽の光のせいで微かに逆光。
でも、見えたその瞳に、
心臓がひどく音を立てた。
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