ドリーム小説
「学園長先生もああいってるのだから、甘えてもいいと思うのだが・・・」
「それでも、ここは学び屋とのこと。部外者がいていいことなど何一つないでしょう。」
「まあ、それは確かに・・・」
私の横を困ったように笑いながら歩くのは土井先生というらしい。
優しげなその表情は、きっと多くの子供たちに人気があるであろうことを予想させて。
ゆったりとした日差しの中、廊下を歩く。
自分とは違って音が出ない隣のその人に、確かにここは忍としての学校なのだと実感しながら。
思いをはせるのは先ほどのこと。
あの場所で、あの人は生徒を助けてくれたのだから行く場所がないのであればここに滞在してもいいと、なんとも優しい言葉を下さった。
頷けるのであれば頷きたかった。
この何処ともしれぬ場所で、生きるためのものを提供してくれるのであれば甘えたかった。
この場所が、学び屋でなければ。
ここにいる皆は授業料を払い、「学ぶ」ためにきているのだ。
それを部外者である自分がいることで歪めてはいけない。
彼らの妨げになってはいけない。
わかって、る。
ごめんなさい、ごめんなさい
それでも、ひとつ、お願いを、した。
「私は、とある人を探してここにいるのです。その人に会えればすぐにこの場所から出ていきます。それまで、おいていただけませんか?」
きっとこの場所を出れば、私は生き抜くことなど難しい。
いつのまにかいたこの世界。
戻れることは、ないだろう。
あの子に、どうかあの子に会うまでは。
私は死んでしまいたくはないから。
「医務室の横の部屋を使うといい。」
からりと開かれたのは医務室の横の部屋。
しばらくの住居の代償として請け負ったのは医務室での仕事。
自分がどこまで役に立てるかは分からなくても、それでも手を差し伸べることはできるから。
「・・・どんな子を探しているか聞いても?」
ぼおっと自分の部屋となる部屋を眺めていれば控え目に問われる。
ゆっくりとそちらを見れば苦笑した土井先生。
「少しでも手助けができれば、と思ってね。」
その本意が何処にあるのか、それはわからないけれど、その笑みは本物だと感じたから。
「名前も、今どうしているのかもわからない。ひどく瞳が印象深い子供。」
暗いくらい、絶望しきったその瞳。
何も見たくない、聞きたくないと全てを拒絶するそのまなざし。
「私がここにいる理由で、私の進む先を示してくれた子。」
医療の道に進むことになった原因の子。
一番治ってほしい子。
「あの子が笑っているならば、私も笑って生きていける。そんな気がするんです。」
きっとあの子が笑ってくれたならば、私は満足して死んでいけるから。
「そうか」
私の言葉に眩しげに笑った土井先生は、ただ一言そう呟いた。
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