ドリーム小説















そのきれいな瞳はひどく印象的で、

俺の奥深くを揺さぶった。



その声はひどく無機質で、

俺の感情を浮き上がらせた。






その存在そのものが、



俺という存在を浮き彫りにするかのように。









おかえりの声が聞きたくて、乱太郎の名前を呼んで飛び込んだ医務室。

乱太郎の気配しか感じなかったその場所にはもう一人、気配を持たぬ人がいて。

自分で感じられなかったその気配に顔をしかめる。


こいつは、何だ。


俺の大事な場所を俺のたった一つのこの居場所を奪うというのであれば容赦するつもりはない。




感情を押しとどめてにらみつければその人は、瞳を大きく瞬かせて、涙をこぼした。




たった一つのきれいな雫を。






しんぞうがおおきくおおきくおとをたてた







焦る乱太郎よりも、その瞳に、魅入られたように動けなくなる。



こんな奴は知らないというのに、どうしてどうして、


俺の心臓は早く動くのか。

俺の頭の中、がんがんと何かが音を立てるのか。



知らぬ存ぜぬと、必死でそれらを奥深くしまいこみ、

嫌悪の表情を貼り付けて。



焦る乱太郎の様子からこの人がこの場所に根付気出していることを感じ取って。



「始めまして。といいます。体調が悪く倒れていたところを助けていただきました。」


「・・・へえ。」







もちろん聞いたこともない名前。


知らぬ存在。


まっすぐにこちらを見てくるその瞳に居心地の悪さを感じながら、できるだけ冷たい声を意識する。



あからさまにそんな声を、視線をむけられれば人であれば誰しも落ち込んだり悲しげな表情を浮かべるものだというのに。


目の前のこの人は、とてもとても嬉しそうに、満足そうに


「だけど、もう完治したから、この場所から失礼します。」



笑った。



ぽろぽろと未だに零れる滴。


それはひどく綺麗なものに思えて、閉じたばかりの感情が思わず表面に出そうになる。



手を、伸ばしてみたくなる。



「え!?しずかさん、もう少しここにいるって・・・!」


乱太郎君の驚いた声に、と意識を戻せば綺麗に笑うその人。


「ごめん、な?学園長先生のところに案内してほしいんだけど?」


乱太郎に請うように言葉を発して、それでも拒否は認めないとでも言うように。


「・・・わかりました。案内、しますね。」


乱太郎が立ち上がって笑う。


「ごめん、きり丸、ちょっと行ってくるね?」


申し訳なさそうにそう告げて、その人と乱太郎は医務室を出て言った。





襖がしまった瞬間、ずるり、ひざが崩れる。




知らない、知らない、みたことも聞いたこともない。

だというのに、突然体中が震えだす。


会いたかった会いたかった、望んでいたその人が。


それはいったい誰なのか、これはいったい何なのか。


知らないのに、記憶にないのに、


心が、頭が、体が、あの人を求めるように音を立てて。



会いたくなんて、ないのに。



わけのわからないこの感情を、いったいどうすればいいのだろうか。


















※※※
きり視点





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