ドリーム小説





















「いつもの通り、指令は僕が。」


庄左衛門の言葉に皆がうなずく。


「しんべえと伊助は先に行って情報を集めてくれている。」


その穏やかな笑みで警戒を解くしんべえ。

色とりどりの色彩で人を引き寄せる伊助。

その二人の組み合わせはとても優秀だ。


「団蔵、金吾、相手を引きつけて。」


は組の体力バカ二人に攪乱を任せて。


「喜三太、虎若、支援を。」


幻術の喜三太に、火縄銃の虎若に援護を。


「三治郎、兵太夫、進入と逃走の経路を。」


からくりコンビと名高い二人は同時に地の理解に優れているから。

最後に庄左ヱ門のまっすぐな目が俺に向けられる。


「きり丸、君が救出を。」


黒い瞳が俺に告げる。

逃げるなと、ほしいものはあきらめるなと。

強く強く込められる思いに息をのむ。


「乱太郎きり丸を頼む。」


俺が暴走でもすると思われているのか。

乱太郎を俺の援護に回して。



にやり、とてもとても愉しげに庄左ヱ門は笑う。




「さて、僕らの大事な仲間のために、いこうか。」



そうしてすっ、と今までの雰囲気が一瞬にして消え去る。





「散」





瞬時、後、残るのは指令棟のみ。



「きり丸、君は一度くらい心をさらけ出さなきゃね。」



小さくつぶやかれたそれを聞いたものはなかった。



















この小さな部屋には行ってきたその人は、私を上から下まで眺めた。
(若干顔を見てため息をついたのはこの際だ、無視しておこう。)

「まあ、いいだろう」

小さくつぶやかれたそれに首を傾げるがいらぬことを口にするべきではないと思い大人しく黙る。


「一緒に来なさい。まず顔を売り込まねばな。」


その言葉でなんとなく理解できた。


この場所は、いわゆる、春を売るような、そんな場所なのだろう。

ぼんやりとしながらも、あの子が受けなくて良かったとそう思う。

忍になるというならばそういうことも理解しているのだろうけど、それでもまだ幼いあの子が清いままであればと。



いくらあの場所で笑みを見ようと、愉しげにしていようと。


私の中のあの子は未だあの場所で涙を流し続けているままだから。





連れ出された先。

そこには自分と同じように綺麗な着物をきた女性が多くいて。

赤い格子。

座敷。

見せ物小屋のように外へと向けて座らせられて。

女中とか、そんなうまい話がある分けないか。


まあ、仕方がない。


自分はこんなにも簡単にあきらめられる人間だったんだろうかと、
そう思いながらもこれから自分の身に起こるであろうことをあきらめていて。


ふ、と横を見ればそれはそれは綺麗な人がいた。


長い艶やかな髪は絹のように。

伏せめがちな瞳はきりりとしていて美しい。

それなのにはかなげな雰囲気を醸し出していて。

私では着られている感満載の着物すら彼女が身につけることで彼女を引き立たせる要因になっていて。


思わずほお、と小さくため息をつけば、その人がこちらを見て艶やかにほほえむ。

女である自分ですら心臓がばくばくしているのだ。

男など一殺だろう。


「お名前をお聞きしても」


・・・声ですら美しい。


、です。」

「かわいらしいお名前。私は仙子ともうします。」

仙子さん。

おお、名前もすてきだ。

もう少しお話できないだろうか、そう思い口を開こうとすれば、私をここに連れてきた男が仙子を呼んで。

それに艶やかに返して彼女はとてもとても綺麗な動作で立ち上がり私の頭を一撫でしてでていった。


本当に美しい。

是非ともあんな人になりたいものだ。

夢の又夢であるとわかっていても思わずには居られなかった。


ご指名とでも言うのだろうか。

呼ばれて行った先、そこにいたのは一人の男。

そして、まあ想像はしていたが改めて目にするとなんとも衝撃がでかい。

一組の布団があった。


仙子さんは大丈夫だろうか。

意識を遠いところに持っていきながらそんなことを考えていた。



















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