ドリーム小説

















全ての感情をぶつけるように、ただただ泣き叫ぶ姿。

声がかれてもなお、その口からもらされる言葉はひどく痛くて。

縋りつかれた小さなその体は、一人で生きていくには小さすぎて。

けれど、わかってた。



自分にはどうしようもできないのだと。



自分にはなんの力もないのだと。



この子を守れるだけの力も、この子に差し伸べられる手も、何も持たない。



今、この瞬間、この小さな体を必死で抱きしめることしか、できなかった。












ゆるり



開けた世界。

いつもとかわらない天井。

なのに


滲む世界。

こびりつくにおい。


あれは夢だと思っているのに。

それを夢だと信じていない自分が確かにいて。



耳の奥に響く、あの子の泣き声が

まぶたの裏に染みついた、あの子の泣き顔が



どうしようもなくやるせなかった。
















あの夢から、はや幾歳。




もうおぼろげなその記憶。

薄れた泣き声

薄れた泣き顔



その中で唯一損なわれないのは、ひどく皮肉なことに、色を失ったあの瞳。



ゆるり


青空を見上げて、その眩しさに目を瞬かせる。


あの時からすぎた時間は驚くほど長く。


誰かを救うことができていれば、あの子はあんなにも泣かずに済んだのではないだろうか。


たくさんあの子を思い泣いた時間。

その中で小さな希望であるかのようにその考えに固執して。

両親が医者であったこともかかわり、私は今医術の道を歩んでいる。


この手が、何を掬えるのか。

もう一度、もしもあの子に会えた時、もう泣かないでくれるように。



あいたい



そう思うその感情はあの夢からずっと心の中にあって。

それが叶うことではないと、理解しているけれど。




それでも、あの瞳に自分を映してくれたのならば。

あのこの世界に少しでも色をつけてあげることができたのならば。


それはどんなに「私が」幸せだろうか。

自分本位な意見に乾いた笑いが漏れる。

でも、もしも

あの子がそれを、ほんの少しでも願うのであれば。






誰でもいい、あの子にもう一度会わせてください。















    その願いはどうしてか、かなえられた。















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