ドリーム小説
「お初にお目にかかります。」
そう言って、ゆるり、頭を下げたのは少し特徴的な前髪を持った少年。
彼はひどく綺麗な顔立ちのまま、こちらをまっすぐに見据えた。
今までこの場所に来た少年たちは常に白いかっぽう着のようなものを身につけていた。
それとは違い、深い深い緑色を身につけた彼は、今までみた誰よりも凛とした雰囲気をまとい、そこにある。
綺麗と言えるその顔は、しかしながら桃色の髪の少年と同じように拒絶を含み。
柔らかく笑っているその表情は、瞳の疑惑の感情によって相殺される。
名前を教えられるでもなく、響く言葉。
淡々と交わされる会話は事務的なもの。
名前は
どうしてあそこにいた
何処から来た
問われるそれらに明確な答えなど持てぬままに、同じように淡々と返す。
自分の名を述べて。
どうしてあそこにいたのかは自分でもわからないと答えて。
自分の家の住所を答えたところでおかしな顔をされるだけで。
少しひそめられた特徴的な眉。
鋭い瞳はそのままに、彼は懐から一つの包みを取り出した。
「これが、あなたの持ち物の中に入っていたものになります。」
これは、なんですか?
包みの中にあったのは、見慣れた形状、懐かしきもの。
「携帯、電話・・・」
その名称を述べればゆるり、瞳がさらにいぶかしげなものになる。
「いったい、なんなのですか?」
念を押されるように問われたそれ。
どのようにこたえるか、少し考えて、それでもありのままを伝える。
「言葉を、遠くにいる人にも伝えることができる道具。」
「思いを、見えない場所にいる人に届けることができるもの。」
「・・・平成の世で、意思の疎通を行うもの。」
ただ、真実をありのままで
まっすぐに、その瞳を見つめ返す。
私の言葉に何を返すでもなく、少年はただこちらをじっと見て。
そうして、ひとつ息を吐く。
「あなたの言葉には嘘偽りが感じられない。」
「不本意ではありますがその体が本調子に戻られるまでこの場所での滞在を許可しましょう。」
困ったように、それでも本当の感情を隠すように、彼は述べる。
ゆるり、わらったひょうじょうは、守るべきもののために。
滝夜叉丸先輩との邂逅
back/
next
戻る