ドリーム小説





























それは唐突に訪れた。


ようやっと熱が下がり、自分の体が自分の思い通りに動かすことができるようになった頃。

ゆっくりと、風通しのために細く開けられた襖。

そこから入ってくる柔らかな風に、じわり、交ったのは、命の、におい。


瞬間、溢れる声。

焦る気配。

膨れ上がるにおい。


がらりと開けられた先、いつもはふわりとした笑みを浮かべていた桃色が、深い深い命の色。

真っ赤に染まる髪が、服が。

ただ、血の気のない真っ白なその顔を際立たせていた。


いつもこの場所に来てくれる眼鏡の子が、少し顔色の悪い子が、言い方はきついけれど一番優しい子が、ひどくこわばった表情で桃髪が身にまとう紺色の衣服を破る。

その周りに紫と深緑の衣服を身につけた子たちが焦った顔つきを隠さぬまま布を持ってきたり、水を汲んできたり、作業をしていて。


「っ、新野先生は?!」

「まだ帰られていません!!」


「川西!お前に任せられるか!?」

「っ、手は尽くします!」


あわただしく交わされる会話。

白く白く、色を変えていく桃色の少年。




気がついた時には、体が勝手に動いていた。






底からの記憶はひどくあいまいで、まるでノイズが走ったみたいだ。


邪魔だと叫ばれて。

それに怒鳴り返して。

声を荒げて、誰かに何かを命じて。

目の前の零れていく命をつなぎ止めるのに必死で。


ただ、目の前の命がもう消えてしまわぬように。

あの子が、もう泣かずに済むように。






気がついた時には、白い顔には常には戻らねど、血の気が戻っていた。

自分の周りで、死んだように幾つもの姿が横たわって。

先ほどまではいなかったであろうこの場所でたった一人知っている大人の人が穏やかな表情で私に気づき頭を下げていた。
















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