ドリーム小説




















忍者を育成する学園。

生まれも育ちも宗派も関係なく受け入れるそれは、敵味方共に多い存在で。

二年前、当時暴君と呼ばれる体育委員長や学園一ぎんぎんに忍者していると言われた存在がまだこの学園内にあった時代。

その時から、この学園は多くの敵に狙われるようになった。

そのため、彼らが卒業してからは今まで以上に授業が過酷になり、一人二人、振り落とされていく存在が増えていった。

だからこそよけいに残った皆は団結を深めていたんだ。



そんな今。



数日前からこの学園に一人の女が滞在している。

俺の後輩である四郎兵衛が意識のないそれを連れてきたのが始まりだった。

四郎兵衛の話によると、裏山の境界線に引っかかった敵を排除するために向かった先に、ただ「あった」のだと。

何一つ、気配も持たぬそれは、ただ振り下ろされるそれをぼおっと眺めていて、気まぐれに助けてみれば、怖かったとこぼして意識を失ったのだと。


見慣れぬ格好。

見知らぬ道具。

綺麗な手。


そして、まったく感じられない「気配」


それはどれをとっても異質な存在。


本当であればそんな得体のしれない存在を学園内に入れるわけにはいかなかったが、彼女の体はひどく熱を帯びていて。


そんな体の人物をほっぽり出すなど、この学園の保健委員が許すわけがなくて。



幾日か眠り込んだその人は、目が覚めた後も冷めぬ熱にうなされるようであった。

なんだかんだで根っからの保健委員気質な数馬がそんな彼女をほおっておけるわけもなく、乱太郎や伏木蔵、左近含む四人の保健委員によって処置されていた。


何かが起こっても反応できる人員で。

何かがあっても冷静に対処できる人選で。


何度か垣間見た彼女はこちらの気配に気がつくこともなく。

ただ普通の女であった。

幾度となく滝夜叉丸たち最上級生によるさりげない尋問が行われて、俺たち五年生による監視が続けられて。

四郎兵衛達二年生によって他の人と接触させないようにと図らせて、そうして何ら起こることもないまま日々を過ごしていた。




その日までは。



普通の、お使いのはずであった。

本当であれば下級生であってもこなせるような。


たまたまなのか、意図的になのか。

白羽の矢が立ったのは数馬で。


桃色の髪をふわり、揺らしていってきますと笑ったというのに。



突如、裏山の警戒網に引っかかった複数の気配。


じわり、体に走った嫌な予感。


孫兵が走らせるは生物委員会で飼育している狼たち。


それについていったのは俺等体育委員。


ぶわり、広がる嗅ぎ慣れてしまったそのにおい。


同時にあるのは多くの気配。

獣のように素早く近づいて、それらを一つ一つ、着実に地面へと鎮める。



金吾が、四郎兵衛が、滝夜叉丸が。



それはそれは鮮やかに艶やかに。



「三之助!金吾!ここは私と四郎兵衛に任せてさっさと三反田を学園に連れていけ!」


最上級生のそして今では学園一優秀とも言われる体育委員長にそう言われれば、そうせぬわけには行かなくて。




連れ帰った学園。

運び込んだ医務室。



広がるだけの赤に、不在の先生に、ぞくり、最悪が頭をかすめた。



その医務室で寝ていたはずの女のことを忘れて。



何時の間にか起き上がっていたそいつは、数馬に手を伸ばす。

それを手をつかむことで止めれば、きっ、と鋭く睨まれて。


「離せ。」


始めて聞いたその声は、思っていたよりも低く、さらにいえば乱暴で。


「数馬に何すんの。」


得体の知らない存在に大事な友に触れられたくなどは、ない。


だが俺の言葉にゆるり、今まで何の色も映さなかった瞳が眇められる。


「離せ。」


再度続けられた先ほどと同じ言葉。

違うのはそのあとに続けられた言葉。


「さっさと離せ。こいつを、殺したくはないだろう?」


意味のわからない、言葉。


こいつによって何かが変わるわけでもないというのに!


いらりと感情が泡立つ。

それはそれはひどい感情だ。


やつあたりにも近いそれ。


ぎり、とひねりあげた手。

痛いであろうそれに、眉をひそめ、そして___



「いい加減に、しろ!私はこいつを、生かしたいんだ!!」


はなたれた言葉は、するり、俺の手を離させることになって。


「眼鏡!綺麗な湯をもっともってこい!そこのお前はできるだけの布を!!」


出される指示は的確で、その瞳は真剣で。

動かされる手は慎重で、動きはひどく正確で。





この日から、この得体のしれない女は、数馬の命を救った恩人になった。


























三之助視点








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