ドリーム小説
宵闇 拾弐
「あの人、どう思う?」
「あの人?」
「ほら、食堂の、異世界から来たって言う・・・。」
「ああ・・・そうねえ。」
「忍たまたちはもうほとんど信じきってるわよ。」
「中には懸想してるのも少なくはないわ。」
「本当に忍たまたちは、お気楽よね。」
「簡単に信じちゃうなんて、忍者に向いてないわよ。」
「同感。・・・さて、それじゃあ私たちは
「件の彼女がどんな人なのか・・・」
「信頼に値する人なのか・・・」
「学園に仇名す者ではないのか・・・」
「「「確かめに行きましょうか。」」」
それは昼休みのこと。
が昼を食べ終え木の上でくつろいでいたときに聞こえた会話であった。
そうして放課後の今。
「雅さん、ちょっといいかなあ?」
「はい?何でしょうか?」
「よろしければ少し一緒にしゃべりません?」
「前からお話してみたかったの!」
「でも、いつも忍たまの子たちがいるから近づけなくて・・・。」
「わっ、本当ですか?私もお話してみたかったんです!」
何の疑いもなく返された返事と笑みにくの一の子達の顔が見えないところで歪む。
連行されていく彼女の背中を再び木の上から覗いていた。
「・・・放っておいてもいいかなあ・・・」
思わず本音が零れるが周りに誰もいないので自重する気もない。
(くの一は忍たまのみんなよりも忍者に近いから、さらに同じ女の子同士であれば警戒は強まる。)
(そして、この場所ではありえないほど『綺麗』な人。いろんな意味でくの一たちの反感を買うだろうね。)
(何の不自由もなかった彼女。だからこそこれはなくてはならない。この世界で生きるためには。)
(あの人が自らを持って経験しなければならないこと)
だけど
「・・・、滝や三木、それから可愛い後輩たちが悲しむのは、あまり嬉しいことではないね。」
えらく彼女になついた友人たちそして後輩たちの姿を脳裏に浮かべる。
仕方ない、そう言って溜息を一つ落としては木から下りた。
「次にあった上級生に伝えておこう。」
もちろん自分で行くつもりなどは、全く ない。
(・・・最初に会った上級生が、この先輩って・・・どうよ。)
廊下を歩いていれば目の前からやってくる緑。
鋭い目つき。
話しかけにくい雰囲気。
にとって面識のない先輩の1人だ。
(・・・仕方ないか)
息を吸い込み言葉をのせてその名を呼ぶ。
「食満先輩。」
「ん?・・・あんたは・・・?」
「4年のです。先輩って用具委員でしたよね?」
「ああそうだが。」
不思議そうな顔をする留三郎。
それは全く面識がないので当たり前のことではあるが。
「先程校舎裏に大きな穴を見つけまして、ご報告しておこうかと思いまして。」
「穴だとぉっ!?まった、文次郎の奴っ!」
実はこれは嘘ではない。
昼前に倉庫の側で会計委員長潮江文次郎、体育委員長七松小平太の両名がその場所を戦場にしていたから、何かしらの被害はでているはずだ。
(これでそっちに向うだろ。)
「其れでは失礼します。」
伝えるだけ伝えて、その場を後にするべく足を踏みだす。
「あ、ちょっと待て、ええと・・・。」
「・・・?」
後ろから聞こえた其れに振り返れば、満面の笑みと共に何かが放ってよこされた。
「わわ。」
慌てて其れを掴めば柔らかい感触と共に甘い匂い。
「、お前学級委員、だろ?いつもご苦労さん。これからもよろしく頼む。」
そう言って颯爽と去っていった。
手を開けば大好物のお饅頭が入っていた。
(・・・怖い印象しかなかったから、近づかなかったけど、意外にいい人見たい・・・。)
手の中のお饅頭と先程の満面の笑み。
それから自分の存在を知っていてもらえたことに思わず顔が緩んだ。
※※※
けまけまさんとはつたいめん
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