ドリーム小説







 



宵闇 拾肆








三之助を追って分け入りはいる山の奥。
そこを三之助の気配を追って忍びらしくすばやく駆け抜ける。
だが1つ下とはいえ3年間体育委員会で走り回っていた経験からか、はたまた基礎能力、男女の差なのかまだ追いつくことが出来ない。


(・・・ここは___)


ふと思い出す。
この景色は最近見たことがある、と。

(えーと、たしかこの間の実習のときだ。)

先日の実習を思い出す。
あの作法委員会によって様々な罠の仕掛けられていたその場所を。

「・・・ちょっとまて。三之助が向かっているこの方向には確か__」


     崖があったはずだ



最悪の可能性にさあと顔が青くなる。
先程よりも足を速めて三之助を追う。

ざあ

微かに開けた場所。
その場所に若葉色の着物を見つけた。


「三之助っ!!」


忍びらしからぬ大声でその名を呼ぶ。


が、
其れが悪かったのか、走りながら振り向いた三之助の姿が


 ゆらり

     ぶれて

         消えた。



「っち!」

盛大な舌打ちを落とし一息でその場所へと移動する。
そうしてそのままの勢いで崖から飛び降りた。
三之助の後を追って。

いきなりのことで驚いているのか受身の姿勢にもなっていない三之助に追いつくと力のかぎり引き寄せて抱え込む。

「三之助!受身の姿勢とれっ!」

身長差が大きいため抱えきれない三之助の耳元で叫ぶと自らも衝撃に備え体を丸める。

腕の中で体を丸めたのを感じるとよりいっそうその体を強く抱きしめる。





「っ___」

体を強い衝撃が襲う。
全身を走った鈍い痛みに、足に走る鋭い痛みに零れそうになる声を抑える。

幸いにも下にあった木が地面に激突する衝撃を緩めてくれた。
それでも体のいたる所が痛むのは事実でおちた姿勢からしばらく動けずにいた。

「・・・先輩?」

痛みに息を詰めていたの腕の中でもそりと三之助が動く。
そうして同時に聞こえた声に持っていかれそうになっていた意識がはっきりとする。

「っ、三之助、怪我は?」

ゆっくりと体を起こして腕を解き三之助に問う。

「俺は大丈夫っす。」

その返事にほっとし息を吐く。
同時に痛んだ体に顔をしかめて。

ふいと顔を上げればたちを受け止めた木が無残なことになっている。

「うわあ・・・。俺たちよく無事だったっすね・・・。」

「・・・確かに。」

その木の間から見える自分たちが落ちたであろう場所は結構な距離がある。
もし此処に木がなければ___と考えるとぞっとする。

「・・・さて。三之助。」

ゆるりとした口調で話し出したに三之助が視線を向ける。

「此処から戻るのだが、残念なことに」

一度口を閉じ、微かに瞬時したあとは言った。


「此処を上るための道具を持っていない。」

「・・・・・。」

じとりとした表情を浮かべてこちらを見てくる三之助にいたたまれなくなる。

「・・・そんな目で見るなよ。俺は今日学園から出るつもりはなかったんだからくないと手裏剣しか持ってきてないんだ。」

先輩のくせに・・・そんな感じだろうか、三之助からの視線の意味は。

「先輩。」

その声と同時に未だに立ち上がっていないのもとに三之助が近づく。

「見せてください。」

「・・・は?」

でも掛けられた言葉はの想像とは全く違っていて。

「怪我、してますよね。俺をかばって」

抑揚のない声は逆に大きな激動を押さえ込んでいるようで。

「何のことだ?」

あえて知らない振りをしてみれば、三之助の顔がさらに歪む。

「解らないとでも思ってますか?」

ゆらり、鋭い目つきで距離を詰める三之助。
は一つ溜息をつくとゆっくりと立ち上がる。
足に走った痛みは間違いではなく今も鋭い痛みを訴えかけてくる。
それでも痛みを顔に出すことなく立ち上がると立ってもなお、自分よりも高い位置にある三之助を見上げる。

「大丈夫だから。」

その言葉にさらに三之助は顔をゆがめて。

へらり笑って見せれば溜息をつく。

「さて、でも上がらないことにはどうにもならないからね。・・・三之助、先に上がれ。お前だけならこれくらい簡単に上がれるだ__うわっ!?」

最後まで言葉を言い切る前に三之助に腕を引っ張られて。
思わずそちらによろければ、その腕の中にすっぽりはまって。

「っ、おい三之助っ!?」

驚き身動ぎし、声を出すも三之助は聞こえないのか聞こえない振りをしているのか、上を見上げた。

次には腰に腕が回されて。

「、なっ!?」

ひょいと重さを感じないような動作で担ぎ上げられた。

「っ、」

(俺の方が年上なのに、何でそんなに簡単に持ち上げられんだ?!あ、そうか俺が女だからか。___って違うっ!こんなことされたら女だってばれるじゃないか!別にばれてもそんなに支障はないけど、って、色々ばれたら面倒じゃないか!!いや、でも、足が痛かったから歩かなくてすむのは嬉しいが___じゃなくてっ!)

の葛藤をよそに三之助はひょいひょいと軽い足取りで崖を上っていく。
それは体育委員会で鍛えられたものなのだろう。

それでも、
腰に回っている力強い腕に
抱え込む強い力に
すっぽり収まる大きな体に

(・・・俺が女なんだって、突きつけられてる気分に、なる・・。)

っ!三之助っ!!」
「「先輩っ!!」」

登りきった瞬間聞こえたそれらの声に振り向けばそこには可愛い後輩たちと心配性の友人の姿が見えた。














※※※
まさかの三之助・・・。
次屋って言い方のが好きだ。





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