ドリーム小説












 宵闇 弐拾壱







襖を閉めて廊下を歩く。
慣れない女物の着物がうっとおしい。
廊下を曲がったところでは力尽きるようにその場に崩れ落ちた。

ぐっと体を縮こまらせ手で胸元をぎゅっと掴む。

    どくり

      どくり

そこには確かな鼓動があって。
でもそれはいつもに比べて早いもので。



頭をよぎるのは、彼女の微笑んだ顔、驚いた顔

優しい声は耳にじんと響く。

まっすぐと迷い無き瞳はの胸に深く突き刺さる。

一つ一つの動作がどこと無く目を引かれる。
柔らかく全てを包み込むようなあの笑みがみんなを惹きつけるのだろう。


とろける様に、甘い甘い甘味のように彼が持つ最大限の魅力で彼女を呼ぶ仙蔵。

年下にもかかわらず、呼び捨てでその存在を知らしめ、常とはちがう柔らかなまなざしで彼女を見る喜八郎。


そんな彼らを


(   俺は知らない   )



まるで置き去りにされてしまったようで、とてつもない喪失感に襲われる。

醜い嫉妬。

その感情に気づいてからはさらに其れが酷くなって

近づかないで

あの場所に

話しかけないで

彼らに

  とらないで


俺の場所を




ぐっとさらに体を縮める。
顔を膝に押し付けて、

何も見ないように

何も聞かないように

自分を押し込める










「・・・、か?」

どれくらいか、そんなに離れていない作法委員会の部屋からあの人と仙蔵、喜八郎が出て行く気配がした。
それをぼおっと感じていれば、掛けられた声。

少し訝しげに呟かれたのは自分の名前。
ぼおっとしていたからとはいえ、気づくことの出来なかったその気配に、慌てて顔を上げた。

「っ、」

そうすればそこには紺色を身にまとった委員会の先輩。
いつもとは違いその目は大きく見開かれていて、その口はぽかんと開いていた。


「・・・鉢屋先輩?」

「・・・化けた、なあ。」


ぽつり呟かれた言葉に、そういえばあそこから出てきてそのままだったことに気づく。


「えと、」

「三郎〜!」

話しかけようとすれば聞こえてきた新たな声。
それはいつものメンバーで。

「・・・・・・・・・・」

一番初めにたどり着いた八左ヱ門がを見て固まる。

「八、どうしたの?」

その後ろから現れたのは三郎と同じ顔を持つ雷蔵。

「・・・わあ・・・」

そう一言言ってこちらも固まった。

「何してんだ?お前ら。」

最後にたどり着いた兵助はそういってをみた。

「うまいもんだなあ。。」

なんのことはないさらりと言った兵助に固まっていた彼らが動き出した。

「お前、か!」

手をぽんと打ち合わせる。
ああ、納得。
そんな効果音が聞こえてきそうだ。

「気づかなかったのか・・・」

三郎の呟き。

、化粧上手なんだね。」

雷蔵がふわり笑って口にしたそれに慌てて訂正する。

「え、あ、いえ、これは立花先輩が___「何いっ!?」・・・え?」

そうが答えればくあっと三郎の目が釣りあがった。

その理由がわからないはあせる。
この人を拗ねさせ・・・もとい、怒らせると後が面倒なのだ。

「ええと、先輩??」

むう、とそっぽを向く三郎(完全に拗ねている)に困り果ては残りの三人を見る。

するとそこにはそれぞれ違った表情を浮かべる3人。

「大丈夫だから気にしなくていいぞ。」
真顔の兵助。
「そうそう、三郎は拗ねてるだけだから。」
苦笑いの雷蔵。

その拗ねてる理由がわからないのに。
そう思い八左ヱ門を見れば必死に笑いをこらえながら口を開いた。

「三郎はただ、同じ委員会の先輩であるっ、〜〜〜〜っ、ちょ、さぶ、ろ!?、いっ〜〜!!!!!」

話す八左ヱ門を遮ったのは件の三郎。
首に腕をかけて締め上げている。

「ちょ、鉢屋先輩っ?!」

慌ててとめに入るがその手は止まらない。


頼みの綱を見るが関わりたくない、だとかごめんあの中に入りたくない、だとか本音駄々漏れの声が聞こえてきて。


改めてその手に触れて声を掛ければようやく三郎は止まって。

「、えと。俺、何しました??」

とりあえずが原因だということははっきりしているのでそう聞けば、ふいとそっぽを向く三郎。
ますます困るの耳に届いた小さな声。

「・・・次は私が化粧をしてやろう。」

(ああ、そんなことで・・・)

ぽつり落とされた言葉はじんわり、柔らかく胸にしみこんだ。
先程までのどす黒い気持ちが和らいだ。

「はい、是非お願いします。」

しまりのない顔で微笑めばようやっと機嫌が直った三郎。
ぽんぽんと優しく頭を撫でられる。
いろんな先輩によくやられるがはそれが嫌いではない。
むしろそのように触れてもらうことは好きだ。

此処に存在することを肯定されているようだから。

   


    それは俺がここにいることの証だ。


















※※※
まだ引っ張った・・・作法の話。
(作法出てないが。)
とりあえず三郎アニメに感化された・・・。
そのせいで出張ったんだ・・・。
化粧なら変装名人の三郎におまかせ!なのに仙蔵にとられて悔しいんです、三郎は。








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