ドリーム小説
宵闇 弐拾参
「・・・善法寺先輩。」
「・・・なんだい?。」
「どうしてほしいですか?」
「いや、助けて欲しいよ??切実に」
長屋の庭であいていた不自然な穴。
不思議に思い覗きこめば、案の定というか、そこにいたのはふう、・・・保健委員長の善法寺伊作であった。
よく周りを見渡せばいたるところにトイレットペーパーが落ちていたりする。
そうしてさらに周りを見渡せば、なんというか不自然なほどの穴がたくさん開いていた。
「・・・で、これは喜八郎ですよね・・・?」
引っ張りあげた伊作にほぼ確信を持ちながら尋ねる。
「うん。半分はこへだと思うけどね?」
「・・・あちらこちらが黒く焦げているのは・・・?」
そう口にしながらもひしひしと嫌な考えが浮かぶ。
「ああ・・・滝夜叉丸と田村の喧嘩に巻き込まれて、ね・・・」
哀愁漂う伊作に全力で土下座したくなった。
「先輩!ありがとうございました!」
「ありがとうございました・・・。」
穴から助け出してやれば元気にお礼を述べる水色のよい子達。
「いや。」
(もとはといえばあいつらのせいだし、な・・・。)
とは口に出さない。
こんなに広い学園内で、こんなにも都合よく被害にあうのはさすが不運委員といわれる保健委員会だ。
「ええと、猪名寺、だったけ?」
「はい!猪名寺乱太郎です!」
眼鏡のこの名前を確認して次にもう一人に目をやる。
「え、あ、1年ろ組の鶴町伏木蔵、です・・・」
微かにおどおどとした様子を見せながらも、しっかりとこっちを見て自己紹介をする伏木蔵。
その素直さに口元を緩ませながら、も自分を紹介する。
「鶴町だな。俺は4年い組のだ。よろしく。」
「よろしくお願いします・・・。」
ふにゃり、顔を緩ませて笑った伏木蔵の頭をなでてやる。
猫のように目を細めるのがかわいい。
その感覚に後ろ髪を引かれながらも、次いでいまだに落ちたままの青色と若草色へと近づく。
「大丈夫か?」
「だ、いじょうぶ、です〜。ありがとうございます。ええと、先輩、ですよね?」
穴から出してやった二人のうち黄緑のほうは、眉を下げながら曖昧に笑って答えた。
「あれ?俺のこと知ってた?」
「三之助がよく後を付いてたのを見てますから。あ、僕は1年ろ組の三反田数馬です。」
「三反田数馬・・・あ、君がか。俺も何度か三之助から聞いたことがあるよ。」
仲があまりよくない学年といわれながらも、は三之助とはよく話した。
それはあの迷子騒ぎ(三之助との初接触のときだ)のせいだが、それからは三之助はよくの後をついてきていた。
そのせいか、三之助以外の3年生にもよく知られているようだ。
「・・・ありがとうございました。」
数馬との話が一段落付いたところで、後ろからかけられた声。
それはどことなく不機嫌で。
振り向けば視線をそらしている青色。
そっぽを向いてはいるが、きちんとお礼を言うぶん素直な子なのだろう。
「いや、怪我、してないか?」
そう聞けば、彼はなんともいえない顔をして。
そっと腕を後ろに隠した。
「・・・腕、擦り剥いてるんだね。」
その動作にそう言えば、顔を微かに顰めて見せた。
「これくらいいつものことd「手、怪我したんだね?左近。見せて?」・・・伊作先輩・・・。」
いつの間にかそばまで来ていた伊作が有無を言わせない笑顔でそう述べた。
さすがに委員長には逆らえないのか仕方がなさそうにそっとすりむいた腕を差し出していた。
「あの子は?」
「左近ですか?川西左近です。」
伊作に手当てを受ける子の名前を、そばにいた数馬に聞く。
やんわり微笑みながら答えた数馬。
お礼の代わりにと、頭をぽんぽんと叩いてやる。
一つしか年が変わらないから嫌がるかと思ったがそんなことはなく。
むしろ微かに顔を上げてさらに微笑んだ。
(・・・なんていうか、保健委員会は癒される。・・・委員長含めて。)
自分のところの委員会はもちろん1年はかわいいのだ。
だが、いかんせん、委員長代理がそれを台無しにするのだ。
としては嫌いではなく、むしろ大好きな委員会のメンバーだったりするのだが。
どことなく、癒しにはかけるので。
「ところで保健委員そろってどこに行くつもりだったんだ?」
「薬草園です。最近薬草の減りが早いんで。」
成り行き上一緒に歩きながら尋ねれば、きぱきぱとした答えが返ってきた。
左近がそう答えてくれたようだ。
「最近5,6年生の実習が激しくなってきてるからですかね?」
何気なくたずねた問い。
聞かなければよかったとは、あとのまつりで。
「う〜ん。それもそうなんだけどね・・・」
「雅さんが二日に一回は必ず、ここに来るんです!」
「・・・いつもどこか怪我してます。」
微かに瞬時したような感覚の後伊作の代わりに教えてくれたのは、乱太郎と伏木蔵で。
ぎしり
歩みが止まりそうになったのを、必死で押しとどめた。
「、そうなんだ。」
何気ない様子で返せたのであろうか。
おかしくは思われなかったであろうか。
そっと胸の中で呟いた。
「三反田、危ない、」
「え?わっ!」
ふ、と顔を上げた瞬間見えたのは数馬。
その歩む先は何もなく見える地面。
だが、そこには微かに罠のあと。
それに気づかずに案の定穴に落ちようとしていた数馬の腕を咄嗟に捕まえて引きよせた。
「大丈夫か?」
「ええと、はい、ありがとうございます・・・。」
お互いにほっと息をつき笑いあう。
が、
「わああ!?」
「・・・」
「・・・」
聞こえてきた声は、先輩でありこの学園最高学年である伊作の声。
先ほどの笑いは数秒もせず苦笑に変わった。
「・・・さすが保健委員長・・・」
ぽそりとつぶやいたそれに数馬はあいまいに笑った。
結局、そんなに離れていないはずの薬草園についたのは、大分たってからでした。
ちなみにオプションとして含むすべての保健委員が満身創痍でした。
※※※
は危ないのを助けようとしたら巻き込まれた。
数馬と左近、伏木蔵初書き・・・。
書ききれてない&キャラつかめてないかんがありありと・・・
2,3年好きなんだけどなあ・・・。
ちなみに三之助との初接触は拾伍話にて。
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