ドリーム小説
宵闇 弐拾睦
体がだるい。
自由が利かない。
それでも、早く起きなくては、早く動かなくては、
あの人は一人ではこの世界で生きることができないのだから。
冷たい地面の上微かに浮上した意識を強制的に覚醒させる。
「・・・しくじった・・・。」
ぼそり、口に出し自分の落ち度を責める。
あの場合は何らかの形で学園に伝えるべきだったのに。
自分の力を過信した。
相手を見くびっていた。
そして、挑発にやすやすと乗ってしまった。
そのせいで彼女はここに連れてこられ、さらにははこの暗い牢で手足の自由を奪われ転がされているのだ。
彼女はこの場所にはいない。
ならばはやく見つけなければ、何が起こるかわからないこの世界。
彼女一人でいられるほど安全な世界ではない。
体に縛り付けられた縄は身をよじっても外れそうもない。
さてさてどうすべきか
(あ)
考えながら身をよじり続けていれば体から微かな金属音
(らっき、だ)
さらしとの間に隠しておいた手裏剣はどうやら気づかれることがなかったらしく、そこにあった。
どうにかしてそれを取れないかと蠢く。
はたからみれば芋虫状態だろう。
(・・・どんな結びかたしやがったんだ・・・。・・・あ、)
胸の中で暴言を吐いていれば微かに手が金属に触れた。
(いよし!)
手にもたせることができればこちらのものだ。
向きをかえて手のひらに収める。
それをそっと縄に当てる。
(これを前後に動かせば__)
がちゃん
はっとして音の方向に目を向ける。
するとそこには赤い服にサングラス。
「目を覚ましたのか」
ドクタケ城の忍が牢の中に入ってきた。
「どんなに動いても無駄だ。抜け出せないように縛ったからな。」
が動いているのを見て笑いながらそう言った。
(・・・もうちょ、っ、と!)
「それは、どうだろうね!」
不快な笑い声が響く中ぶちりと残りを力で引きちぎる。
そのまま高く跳躍し、忍びの後ろに回りこむ。
それに振り向こうとした忍の首元にするどく手刀をいれる。
「ぐっ、」
くぐもった声を出すとその忍びはあっさりとその場に崩れ落ちた。
「ごめん。おやすみ。」
そう言って、忍びの服を剥ぎ取って自身が身に着けた。
でかいのは仕方がない。
「っ、」
首を動かせば意識を失ったときの後遺症だろう、痛みが走る。
何度か首を回せばその痛みにも慣れてきて、忍びの腰から鍵束を奪い取ると、忍びをそのままに鍵をかけ牢から脱出した。
「脱出成功。」
ポツリ呟いて、ゆっくりと気配を探る。
(あの人の気配は独特だ。)
なので探りやすい。
だが、
(この近辺には、ない。・・・城の中、か。)
この地下牢は城とつながってはいないようだ。
人の気配がなさ過ぎるから。
城に向かえば確実に多くの忍びがいるだろう。
面倒なところにつれていかれた彼女にとりあえず溜息を吐く。
ふと感じる違和感
(ドクタケにしては手際がよすぎる・・・誰か別に、いる?)
考え付いたそれを頭に入れながらは地下牢からぬけだした。
幸いなことに周りには誰の姿もない。
ドクタケの格好をしていても、はドクタケのものではない。
そのため何か尋ねられても、うかつに返事ができない。
それならば、と、は忍びらしく天井裏に忍び込んだ。
ゆっくりと慎重に体を運びながら彼女の気配を探る。
さらには周りの気配をも探るが感じるのは今のところ天井裏に住み着いた小さな生き物の気配くらいだ。
(まだ、さき。)
音を立てないこと。
気配を消すこと。
神経を研ぎ澄ますこと。
最大限にそれらに気をつかいは進み続けた。
※※
思ってたより長くはならなさそうかもです。
・・・たぶん。
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