ドリーム小説









   宵闇 弐拾漆






  暗闇を走る

    音を立てずに

   気配を消して

         闇に忍ぶ

   それはまさに

       忍びそのもの


雅さんを連れ去ったのはドクタケであることが判明した。

小松田さんの入門表にそう書かれていたのだ。

止めろよ、小松田さん。と思ったのは今さらだろう。




の姿が昨日の晩から見えないらしい。』

そういったのは6年1の切れ者こと作法委員会委員長の立花仙蔵先輩で。

『十中八九、雅と一緒に連れていかれた。』

次いで言葉を発したのは暴君こと体育委員会委員長七松小平太であった。
(『十中八九』なんて言葉を七松先輩が知っていたんだなあ、とか考えたのは秘密だ。)

『それは先生方には?』

のことを考えていっていない。』

うん。
正しい判断だと私も思う。

『知っているのは?』

『うちの滝と仙蔵、仙蔵んとこの綾部くらいだ。』

つまり、私を含めて5人、ということか。

私に話したのはが学級委員会委員だからだ。
今回編成された捜索隊は主に委員会ごとになっている。
そのためがいないことを一番に疑問に持つのは私だということだ。

『・・・三木にもタカ丸さんにも言わないんですか?』

ぽつり、そういったのは立花先輩のそばにいた綾部だ。
いつもと同じように見えてどことなく焦ったように感じるのは、やはり心配だからだろう。

『言うべきではない、ですね。』

私の言葉に先輩二人が頷く。
 
『もし行方を聞かれたならば、学級委員のほうで別に行動しているとそういっておけ。』

立花先輩の言葉に頷く後輩。


『・・・なあ。』

ずっと黙っていた七松先輩が口を開いた。

その空気が変わったことに気づく。

『喜八郎先に向こうに行っていろ。』

『はい』

それに綾部は立花先輩から離れた。

『どうしたんですか?七松先輩。』

『おかしくはないか?』

『彼女が消えたことに、すぐさま捜索隊が出されたことか?』

『それとも、ドクタケの手際が珍しくいいことですか?』

すぐさま考えられた<おかしな点>をあげる。

『両方だ。何故、先に帰った可能性を考えない?何故、はそんなに簡単に連れて行かれた?』

難しい顔で考え込んでいる七松先輩に

『裏に誰かがいるのでしょう。』

さも当然なそれを口にする。

『恐らく、な。』

立花先輩もわかりきったようにそう告げた。






暗闇を走る。
いつもとは違い口元までをすっぽりと覆って。

隣の銀が目に入る。

「はち」

「なんだ。」

無意識に読んだその名にすぐさまある返答。

でもその声は常とちがい余裕がない。
それに微かに息をつく。

(まったく・・・)

「はち。そう焦るな。お前の雰囲気にびびって、森のざわめきが激しい。」

こいつが獣の気配に敏感なように、獣のほうもほかの人に比べてはちの気性に左右されることが多い。
はちのあせりがこの森を不安定なものにしている。


「あの人がさらわれたのは、確実に学園と敵対するものだろう。」

疑問文でもなく、それは淡々と告げられる。

「学園の落ち度だ。彼女が狙われることは解っていたはずなのに、それを見過ごした。」

「あの人は今一人だ。」

「・・・はあ。」

こいつは時にとても一直線だ。
自分の落ち度であるはずがないそれまでもを背負い込む。
それは忍びというにはあまりにも優し過ぎる欠点。

「ほんとは話すべきじゃないんだがね。はち。あの人には今が付いている。」

「・・・は?」

意味が伝わっていないわけではなく、理解が追いついていないだけであろうそれに再び口を開く。

「一緒に連れて行かれたらしい。」

「だが、も、「大丈夫だ。私の後輩だからな。」・・・そうか。」

心配性のはちに言ってやればようやっと緩む気配。

「じゃあ大丈夫だな。」

その横顔にはいつもの太陽のような笑みを浮かべて。



さあ改めて、私たちのお姫様を取り返しに行こうか。








体育委員である七松先輩と平滝夜叉丸、会計委員の潮江先輩と田村三木エ門は陽動として正面で暴れまくる。

作法委員である立花先輩、用具の食満先輩に学級である私、で進入する。

火薬の兵助(タカ丸さんはお留守番だ)に図書の中在家先輩、雷蔵は退路の確保。

保健である善法寺先輩に作法ではあるが4年であるため進入班に加われなかった綾部(機嫌はすこぶる悪い)は待機&後方支援。

そして生物であるはちは中継を担当する。




「さて、それではいこう。」

「目的は彼女を傷つけず取り戻すこと。」

「彼女を連れ去った目的を聞くこともだ。」

「では再びこの場所でね__」


「「「「散」」」」



城から近すぎず遠すぎることもないその場所。
月は雲によってさえぎられ不確かな光を届ける。
忍びにとって最も最適なその闇の下作戦は決行を開始した。

























※※※
こへは頭がいいんじゃなくて、勘で感じるし、悟る。
おかしいとおもっても、何故、かはわからない。
みんな彼女がいなくなったことにあせることはあせってるんですが、忍びですから。
捜索することは解っているんだけども、頭から切り離して任務と捕らえている。
それは上級生になればなるほど。
冷徹なわけでも、薄情なわけでもなく可能性を考えて言葉にしている。とか?
最後の「」は仙蔵、留、もんじ、いさくです。







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