ドリーム小説










 宵闇 弐拾捌












なんとか何者にも遭遇することなく、彼女の気配がするところまで近づくことができた。
その天井裏からそっと気配を探る。

(あの人に、この城の城主、八方斎ってやつに、忍が・・・5、か)

「なんなんですか?あなたたち・・・私を早く返してください!」

「そうあせるな。私たちはとても面白い情報を掴んだのだ。」

その言葉は強気で発せられているが、震えている。
それを相手もわかっているのだろう。
答える八方斎の声は嘲笑を含む。

「・・・面白い、情報、ですか・・?」

考えるそぶりを見せる彼女同様に天井裏でも何のことかと考える。
でも、この場合であればきっと__

「そちはこの世界ではないところからきたと聞いた。さて、ではこの城でこの世界にはない知識を伝授してもらおうではないか。」


それは暗に、この世界ではまだない知識をこの城のために使えということ。


彼女のことがいつまでもばれないとは思っていなかった。
めったなことで外部からの人物を雇ったりしない学園に突如現れた女性。
いくら探ろうとも出てこない彼女の軌跡。
そして、この世界のことを知らなさ過ぎるその様子に見たこともない道具を知る人物。


すべてを隠し通すには、忍術学園を狙う勢力はありすぎたのだ。

彼らは思ったのだ。
彼女を手に入れれば今の力をもっと強大にすることができるようになると。
なんという勝手な解釈か。
でも、それが、この時代。


相手にすべてがばれていることが逆に落ち着きを与えたのか、彼女はゆっくりと話す。

「・・・なぜそう思うのかは解りませんが、私はそんなこと知りません。ですが、」

一度話を区切りそして再び口を開く。

「私はあの場所が大好きなんです。だから、あの場所に不利になることはしません。」


強い声。
そこに先ほどまでの震えは、ない。


(・・・この人は、ほんとうに・・・)

解ってはいるのだ。
彼女がなぜあんなにも好かれるのかを。
知ってはいるのだ。
彼女が泣き言一つ言わない理由を。

の中で何かがことりと音を立てた。

存外弱くはないその心。
それはがもたないもので。

ぐっと胸元の装束を握りしめた。


「話さないというならば、話させる方法などいくらでもあるのだよ。」

その言葉はしんとした部屋にひどく響いた。

「忘れていないか?・・・もう一人一緒に捕まえた者がいることを」

「っ!」

微かに息を詰めた気配。

愕然とした彼女になおも続けられる話。

「そちらが話さないのであれば、あのものの体に聞こうではないか。」

「あの忍びの卵も学園の一部、といえなくはないだろう。」

続けざまに発された言葉に彼女は答えることができずに。
その顔に浮かんでいるであろう笑いが容易に想像できる。

「だ、めです!」

咄嗟に彼女の口から出たのはなんとも頼りにならない言葉。
拒否したところでそれはさらに彼らの意思を強めるだけだというのに。

「あいつを連れて来い。」

八方斎が部下の忍びに告げる声がする。
それに出て行く二つの気配。
忍びが二人消えた。

この部屋にいるのは彼女を抜いて、5人だ。
一人で相手するには荷が重い。
だがこのままではいずれ今のやつらが戻ってくる。
それならば、
(強行突破あるのみだ。)

慎重に進入の機会をはかる。


が、


「みつけた。」

後ろから聞こえたのは感情の感じない淡々とした声。

「っ、」

突然現れたそれに、気配を悟ることもできなかったそれに、瞬時に背中を冷たいものが通った。
すぐさま体を反転させてその声の主と向き合う。
胸元にしまっていたくないを構え姿勢を最も動き出しやすい体勢に変える。


どくん

どくん

早い鼓動を意識して遅める。

「逃げてもらっちゃ困るんだ。」

闇の中だというのに、赤いサングラスが反射してその中の目はうかがうことができない。

(・・・この声はあの時後ろにいたもう一人、だ。)


聞いたことのあるその声は、がここにくることになった原因ともいえよう。



ゆらり

そいつの姿が一瞬ぶれる。

(はやいっ!)
「っ!」

次の瞬間真横に現れたその人物から放たれたくないを自らのもので叩き落す。
狭い、限られた場所だというのにもかかわらず、その動きはとてもすばやく。

早すぎて目で追うことができないほどのその人を必死で悟り、自らを守る。

後ろへ一歩後ずさり次の攻撃に備える。

目を凝らしその姿を捉えぐっと踏み出すため力を入れる。

くっ

それは一瞬。

が踏み出す寸前に相手が動いた。
その姿はいつのまにか目の前にあった。
懐まで入られてはまずいと咄嗟に後ろに踏み出そうとするが、先ほどまでは前に進もうとしていたためうまく力の入れ替えができない。
その隙に相手はのもっていたくないを叩き落した。

からん

乾いた音が響いた。
小さな小さなその音はしかしその下の部屋に響くには十分だったようで。

「だれだ!?」

ああ見つかった、と思うよりも早く、を捕らえたその人物によって下の部屋へとつれて行かれた。





※※※
にんたまきゃらが不参加だ・・・。
おかしいな・・・







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