ドリーム小説
宵闇 参
始めまして。
その人はそう言ってふんわり、とても綺麗に微笑んだ。
名前は藤堂雅(とうどうみやび)というらしい。
その名のとおり、確かに雅やかで美しい。
それでいて、不安げに揺れるその瞳は酷く庇護欲をそそる。
学園中が彼女に心酔するのも納得できそうなほどに。
(・・・あほらし。)
緊急に行われた朝会は、やはりあの人のことだった。
曰く、この学園に事務員補佐として置くとのこと。
彼女が異世界から来たのだという話は光と共に現れたことによって、現実味を増したらしい。
皆彼女の話に興味を惹かれ、彼女の姿に目を奪われ、彼女の笑顔に心動かされているのだろう。
現に下級生だけでなく上級生の幾人もが彼女を食い入るように見つめている。
の同級生である滝や三木も例外ではなく。
(・・・こんな簡単に信じるのかねえ。仮にも忍びの卵の癖に。)
はあ、とはいた溜息が隣にいた喜八郎にも聞こえていたのだろう。
前を見ながら口を開いた。
「。」
「・・・なにさ。」
「あの人、さ。」
「あ?あの人が何だ?」
「なんかみたい。」
その言葉に思わず喜八郎を見るが彼はこちらを見てはいなかった。
「始めて会ったときの、みたい。」
再び言われたそれにふいと視線をそらしては言った。
「全く似てねーよ。」
俺なんかには、ね。
あんなに可愛くもなければ素直でもない。
胸の中に残るわだかまりを見てみぬふりをした。
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