ドリーム小説
宵闇 参拾
「っ、く・・・」
「これはこれは。よびに行く手間が省けましたな」
畳の上に押さえつけられて身動き一つできない状態。
そのままきっと目の前の八方斎を睨みつけるが、見上げる状態のため効果はまったくない。
「っ、」
微かに身動きをしようと体を動かせば、抑える力が強くなる。
動こうとも動けないその状態に心の中で溜息を吐き、あたりの様子を目だけで伺う。
そうすればやはりというか、彼女と目が合って。
ゆらり、その瞳が揺れたと思った後、大きく見開かれた。
(・・・ばれた、かな。)
以前作法室でしてみせた女装(立花先輩作)その場に居合わせた彼女に、見つけてみろと挑発をした。
そんなに簡単に見つかるつもりはなかったが、非常事態だ。
仕方がない。
ふ、と自分を落ち着けるために息を吐く。
目の前の八方斎をそしてその奥にいる城主を視界に入れ口を開く。
「何をされようと、俺は何も話さないし、口を開くこともしない。」
次に彼女に向かって。
「あんたも、俺がたとえ何をされようとも、気にする必要はない。」
「っ、でもっ!」
の言葉に言いよどむ様子を見せる彼女に重ねて言う。
「俺は忍びだ。あんたとはちがう。痛みにはなれているし、あんたのように弱くもない。」
「だからいらないことをしてくれるな」
本心から告げたのにもかかわらず、彼女の瞳は先ほどよりも潤んでいて。
どうしようもなく悪いことをしている気分になって。
はあ、と一つ溜息。
ふわり
今できる精一杯の笑みを彼女に。
微かに目を見開いた彼女を放って目を瞑る。
すっと意識を集中させて、ぐっと体から力を抜く。
押さえつけていた腕が微かに訝しげに力を加えた。
押さえつけられた肩の関節をはずそうと肩に意識を集めた。
その瞬間。
どん
響く大きな音。
何度も何度も聞いたことのある音に、頬が緩む。
「何の音だ!!」
「解りません!」
一瞬気を抜いた忍び。
そのため抑える力が微かに弱くなって。
体をねじり、できた隙間を使って押さえつけている忍びを蹴り上げる。
再び緩んだ力にさらに体をねじり抜け出す。
カモフラージュのためにきていた赤色をぬぎさり、紫に戻る。
抜け出すとすぐさま立ち上がる。
今までを捕らえていた手が再びを捕らえようと伸ばされる。
それを後ろに一歩踏み出して避け、間髪いれずに踏み出す。
懐に入り込み、あごを蹴り上げる。
相手もそれにすぐさま反応。勢いのまま後ろに飛び上がり下がる。
そのときようやくその場にいたほかの忍びたちも動き出して。
一人は八方斎とその後ろの城主を守るように。
残りの二人はこちらに向かってきて。
伸ばされた手から逃れるためにしゃがむ。
そこを狙って振り下ろされた足。
そのもう片方の軸足を足払いして体制を崩したところで飛び上がる。
そのまま二人の後頭部に両手をかけ、交差させた。
ごん、と鈍い音がして二人の忍びはその場に崩れ落ちた。
ひゅ、と流れた空気に体が無意識に反応して、彼女のすぐ前へと一瞬で移動。
残念ながらくないや手裏剣は天井裏での攻防の際に落としてしまったため、手元にない。
仕方がないので飛んできたその飛び道具を彼女を背後にかばいながらよける。
「く・・・」
さすがにすべてをよけることはかなわず、いくつかを自らの体で受け止める。
「っ、大丈夫!?」
驚きと困惑。
それらすべてを詰め込んで心配という言葉を名づけて。
彼女の声はその場に響いた。
「大丈夫、だ。」
痛みをこらえ答える。
「っ、でもっ!」
「大丈夫。みんながもうすぐ助けに来るから。」
「、え?」
「さっきの音は三木のゆりこ。」
次の攻撃のに備えて、彼女の体に後ろ手で腕を回す。
「心配しないで。みんなが来るまではあんたは俺が守るから。」
だからあんたはそのままで
紅に染まることはしないで
あの場所には汚れをしらない、純白のままのあんたが必要だから
後ろで息を呑む気配がした。
再び投げられたくないや手裏剣。
先ほど投げられたくないで受け流す。
でもやはり数が多くて。
肩に触れる彼女の手はふるえていて。
足、腕、髪、胴、さまざまなところに傷が付く。
それは皮膚を怪我すると同時に、装束までもを切り裂く。
「っ、!」
さらしまでもを切り裂いていて。
それはただの布の固まりとなり意味を成さなくなった。
微かに見える肌。
「・・・お前女か?」
『お前、女、か?』
どくん
その言葉に頭の片隅で警報がなる。
言葉を放ったのは、先ほどまでを捕らえていた忍び。
「そうだとしたらはかせる方法は増える。」
『いいねえ?楽しみが増えた。』
言葉を継いだのは城主。
どくん
「・・・え・?」
驚きの声は後ろから。
『女なんだから』
『女の癖に』
『女ならばいくらでも使い道があるさ。』
「__っ、い・・・」
「何か言ったか?」
「お、れはっ、俺は、女じゃない!!!」
微かに頭によぎった記憶たち。
それはいやな思い出ばかり。
「っあ」
一瞬取り乱した。
それが命取り。
胴に走った熱に、次いでやってきた大きな痛みに
思わず傾いだ体を後ろから彼女が支えて。
「茶番は終わりだ。」
向けられた幾つもの刃に、動くことができなくなった。
「っ」
痛みをこらえて相手を見据えて。
(俺じゃ彼女を守るのは不可能なのか)
絶望に襲われたその瞬間
空気が揺れて
気配が変わった
※※※
あれ、なんかさらにシリアスっぽく・・・。
そして雅さんの名前読呼んでないって言う、ね・・・。
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