ドリーム小説













 宵闇 参拾参



暗い屋根裏を音を忍ばせて、気配を断って進み続ける。

結構進んだにもかかわらず見つからない気配。
それはつまり、彼女らが最上階にいることを示していて。


「最上階、ですね。」

「そのようだな」

鉢屋の抑揚のない声にこの後輩はなんて忍びに近いのだろう、と思う。
思いながらもその言葉に返事を返して。

先ほどからまったく話さなくなったのは留三郎だ。
こいつは任務の際は無言になる。
それは緊張しているのもあるだろうが、忍びとしての性であろう。

かく言う私も、頭の中ではこのように考えてはいるが、実際は言葉などあってないようなもの。

ここから先はさらに増えるであろう見張り。
それらに気づかれないように、矢羽を使う。
それを告げてさらに動く。




どん


急に大きく響いたその音に、なかなか派手に始まったじゃないか、と思った。

今の音は文次郎のところの田村の火機であろう。
田村も私同様火薬を使うことが多いため、よく話したりするのだ。

城の中がざわざわとざわめく。

喧騒が広がり、幾つもの気配が外に出て行く。

つまり、小平太たちの陽動は成功だということ。

あとは私たちが彼女らを助け出す。

それで万事うまくいく。



そのために、はやくあの子達のところへ。



一番に反応したのは、鉢屋だった。
(こいつは時に私たち6年よりも忍びらしい。)

その次に留三郎、そして私。

はじめに気づいた鉢屋がゆっくりとこちらをみて。

矢羽でやりとりする。



 ___血のにおいです。

 ___しかも濃いな。

 ___早く向かおう。



どくり



大きくなった鼓動を落ち着けさせる。

忍びに、動揺は禁物だから。



 ___ここ、ですね


一際濃い匂いがするそこ。
その部屋には独特な彼女の気配もあって。

耳を澄ませば聞こえてくる声。

無事なようで少し安心した。



「心配しないで。みんなが来るまではあんたは俺が守るから。」



  その言葉に心のそこが温かくなる。

     が私たちを信じていてくれることに。

 絶対の信頼を寄せてくれていることに。


      可愛い可愛い後輩に。


会話が途切れたと思えば、聞こえてきた金属音。

体が動きかけたが、それを抑える。

まだ、だ。

まだ突入できる状態ではない。

そうしているうちに止んだ音。

見合わせてタイミングを計る。



「・・・お前女か?」



どくん

一際大きく音がなった。

それと同時に膨れ上がる隣の気配。

落ち着けと矢羽を飛ばせば睨み返されて。

今は出るときではないと、留三郎に抑えられどうにかこらえる。


「そうだとしたらはかせる方法は増える。」


その声に今度は留三郎の気配も怒ったものに変わる。

それでもまだ冷静さをなくしてはいない二人がいることに安堵する。

私自身もあまり冷静だとはいえないから。


「・・・え・?」 


雅さんの声に留三郎の気配が少し、ほんの少しだけ治まる。





「__っ、ない」

「何か言ったか?」

「お、れはっ、俺は、女じゃない!!!」


激情のままにはかれたその言葉たち。

あまりの悲痛さにこちらも思わず息を詰める。



やばい、と思うには遅すぎて。



充満する血の匂い。

「っあ」

もれる苦痛の声。

大事な後輩の苦しげな声に頭は真っ白になって。


「茶番は終わりだ。」


その言葉と体が動き出したのは同時であった。













※※※
仙様視点。
やっほい。
やっとここまでこれたよ。






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