ドリーム小説







 宵闇 参拾肆








  世界が塗り替えられるようにその姿は鮮明だった




向けられた刃に、痛みになすすべなくうずくまるの前に現れたのは、3人の忍び。

それらは常とは違い黒一色をまとい、

口元まで上げられた布がその顔を表情を隠す。


でも、そのさらりとした黒髪に、鋭い目つきに、特有の雰囲気に、

誰かということはすぐにわかって。

心の中に広がる、安堵。

を女だといった忍びには三郎が一直線に向かっていき、ほかの忍びには仙蔵が、八方斎には留三郎が。


揺らぐ世界の中で一瞬にも近い時間で敵を叩き伏せた先輩たちに、

どうしようもなく感情があふれる。

怖かった

怖かった

このまま誰も助けに来てくれないと思った

彼女を守りきることなど、今の俺の力では不可能に等しくて。



「もう、大丈夫だ。」

留三郎が彼女にそっと触れて呟く。

「留、くん・・・っ」

それにこらえていたものがあふれるようにすがり付いた彼女。

、よくがんばったな」

仙蔵がいつの間にか目の前にいて、呟いて頭をなでてくれた。

「さすが学級委員だ。」

優しくかけられた三郎の声はどこか遠い。





ごめんなさい

先輩方が、学園のみんなが大切に思う彼女を危険な目に合わせてしまって。

ごめんなさい

俺なんかの力じゃ、守りきることはできない

ごめんなさい

知らない世界にもかかわらず、笑顔をくれたあんたに怖い思いしかさせてあげれなくて


ごめんなさい

 _こんなにも弱いわたしで_



くらり

世界が回って

「っ!」

「「!?」」

!!」

聞こえるのは自分の名前。

それを認識しながらも

の意識は闇へと沈んでいった。
















「 ・・・お前、女か?」


その言葉に体のそこから熱があふれた。

何も知らないくせに、そのような言葉でその子を傷つけるのは許さない。




その場に降り立ってから、勝負が付くのは一瞬のことだった。

その言葉を吐いた忍びの懐に入り込み、蹴り上げる。
体をそらして避けた忍び。
そのままさらに近づき蹴り上げたままの勢いで腕を振り下ろす。
手のひらで相手を叩き伏せてくないを首元に当てて。

「俺の大事な後輩を傷つけた報いだと思え。」

耳元で呟いてすぐさまその男の鳩尾を叩きくぐもった声を上げて意識を失ったそいつを放置して、先輩の元に向かう。

立花先輩もほぼ一発で相手を昏倒させていた。

食満先輩にいたっては一睨みで終了だ。


そのまま先輩は雅さんへ近づいて優しく、ほんとうにまるで壊れ物を扱うかのように優しく触れて。

「もう、大丈夫だ。」

そういえば涙が決壊したかのように雅さんは食満先輩に縋りついて泣き出した。

心臓がつきりと痛んだのは今は放っておこう。

立花先輩はに近づいて優しく頭をなでて。

、がんばったな」

と呟いた。

私も声をかけた、が感じたのは違和感。

こちらを見てはいるが、見てはいない。

虚無がそこにあって。

やばい、これは危ない。

そう思った瞬間だった。

の体が崩れ落ちたのは。


!」

叫びその体を支える立花先輩のそばに跪く。

その顔は青白く、常に白いその肌は、いたるところ紅にまみれ。

胴の辺りからの出血は止まることなく。



どくりどくり

大人気ないほどの動揺が走る。

その点、先輩はさすがに行動が迅速で。

「鉢屋、留三郎、早く脱出するぞ。・・・雅さんもうしばらく我慢してください。留三郎。雅さんを任せた。鉢屋、お前はを。私が殿を勤めよう。」

「ああ。」

「わかり、ました。」

ゆるり受け取ったはいつもに比べて体温が低くて。

いつもとおなじように軽かった。






どうかどうか消えないで

      君は

大事な後輩で、かけがえのない存在なんだ。
















※※※
三郎はがとても大事。
でもそれは恋愛よりも親愛に近くて。
まるで家族のように思っていて。

三郎は強そうに見えて、一番別れを恐れそう。






back/ next
戻る