ドリーム小説
宵闇 参拾漆
君のそんな姿を見た瞬間、息が止まるかと思った。
雅とを助け出す班に私は割り当てられることはなくて。
作法委員は立花先輩だけが救出に向かった。
私は役に立たないといわれているようで、とてつもなく悔しかった。
竹谷先輩の暖かい手にも心安らぐことなどありはしない。
ただただ、二人が戻ってくるのを待っていた。
雅さんは食満先輩の腕の中にいて、泣きはらした赤い目をしていた。
む、と胸の中がむかむかとしたけれども、無事そうだったのでちょっと安心した。
でも、その次、鉢屋先輩が連れて戻ってきたを見た瞬間血の気が引いた。
その体はあまりにも赤にぬれていて、
その装束はいたるところが破けていて。
彼が彼女だと示すには十分のこと
善法寺先輩が治療するのを呆然と見ていて。
現れた利吉さんのその言葉に、驚きと、悔しさと怒りがこみ上げた。
そんなことのためだけに、雅を危険な目にあわせて、さらにはがこんな目にあったの?
急いで戻った学園。
そこでもは予断を許さない状況で。
雅は帰った瞬間ほとんどの生徒によって取り囲まれた。
口々に無事を喜ぶ声が聞こえる。
安心したとその笑顔たちが告げている。
その代償としてはいまだに苦しんでいるというのに。
いらいらいらいら
むかむかとした感情が、苛立ちが募る。
雅にたいしてではない。
雅が悪いわけではない。
誰が悪いのかと問われれば、学園と答えるしかないのだから。
でも、は今学園で治療を受けていて。
どうしようもないやりようもない気持ち。
滝や三木が幾度となく声をかけてきた気がするけれど。
ごめん。
今の私には何も言わないで。
いらいらいらいら
この気持ちを収めるために、無心で医務室の前の庭で穴を掘り続けた。
珍しくも用具委員には何も言われなかった。
の目が覚めたのは救出してから3日後のこと。
私は授業にも出ず、出れるわけがない、こんな状況で。
用具委員が穴を埋めて、そこをまた私が掘る。
ただいらだちを解消したいがために。
保健委員が必ず落ちてはいたけれども。
そんなことを繰り返していた3日目。
が眠り続ける医務室でただそのそばに座っていた。
それしかできなくて、もどかしくて泣きそうな気分になる。
ふ、とひとつ溜息を吐いて、うつむく。
が目覚めなければどうしよう。
であったのは4年前で、まだ4年しか一緒にはいない。
でもその期間にのことはいろいろ知ったし、お互いに背中を預けて戦うほどの信頼感は持ちえている。
いつまでもともにいられるとは思ってはいないくても
『あの子は不安定な存在ですから』
少しだけ世界が潤んだ。
ねえ、はそういうことなんですよね。
はこの世界で雅に一番近くて、私たちから最も遠い存在。
あなたはどうしてこんなにも不安になることを私に告げたのですか?
いらいらする不安定な思考のせいで過去の記憶が思い出される。
とあの日、実習を受けた日。
あの日のことをはよく覚えていないようだった。
布のこすれる音。
はっとしてそちらを向けば微かに身じろぐの姿
「っ、」
痛そうに息を詰める。
こちらをみたその瞳は黒檀の意思を秘めたその瞳は寸分たがわず私を映す。
が目を覚ましたことにうれしくてうれしくて、その体に飛びつく。
「」
「」
「」
何度も何度もその名を呼んで、の存在を確かめる。
「ただいま、喜八郎。」
その声にさらにしがみついた。
比例するようにの腕の力も強くなって。
おかえり大事な大事な___
「喜八、っ、っ!?」
「っ、が目を覚ましたのか?!」
がらり、あけられたふすま。
と、同時に叫ばれた声。
振り向けばおなじみの紫に身を包んだ友人が二人。
「おはよう」
の言葉に、滝は頭を抑えて、三木は壁に手を着いて二人して溜息を付いていた。
大事な大事な友人でかけがえのない親友でなくすわけにはいかないさいあいのひと
※※※
もどってきた日常
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