ドリーム小説





 宵闇 伍拾壱













あたりに立ち込めるのは灰色の煙。

この状況はどう見ても不利だ


こちらはたまたまとはいえ会計、生物、学級の三つの委員会が居るにもかかわらず、だ。

まず、こちらには下級生が多い。

そのうちまず一平は先ほどの図書とのやりあいにより腕を負傷。
残念ながら待機だ。
そして団蔵と佐吉。
この二人も先ほどから作法から逃げるのに体力を使い切ったのだろう。
へろへろになっている。
また1年までは行かなくても、会計のものたちは皆結構な体力を消耗している。

さらには雅を守ると言う最大にして最難の使命がある。

そして以外の学級はその雅を守るためにそばから離れないことにしているため実質的人数は差があるのだ。


爆煙とともに視界が悪くなる。

「その程度か?文次郎。」

「っ、ぐぅ・・・」

仙蔵の声と同時に聞こえてくるのはくぐもった声。

いつもぎんぎんに忍びをしている文次郎の弱った姿に思わず見てみたいと言う衝動に駆られるが残念ながら視界は最悪。
さらには目の前には手鋤のてっこちゃんを構える喜八郎。

「退いてくれるわけ、ないよな・・・」

「もちろん。と手合わせするのは久しぶりだからね。__手加減、しないよ。」

「はっ、そんなの必要ねえよ。」

一瞬の邂逅。
それはお互いの視線が交じり合った瞬間。






「さすがに疲れきってるんだねえ?三木。」

対峙した目の前の同級生に告げる。

先ほどまでの逃走劇に、さらにはいたるところで付いた爆撃の後に、傷に、さすがの4年の優秀な彼も苦しげで。

そんな君になら勝てるかなあ?

そんなことを口にすればきっと鋭くなる目。

ああ、こんなことで簡単に心乱されちゃって。
だめだなあ

そんなことを思いながらゆっくりとくないを構える。

確かに君に比べて経験は確実に劣っている。

4年の差がそんなに簡単に埋まるとは思っていない。

それでも、それでも僕は君よりも2年長く生きている。
それに、今は僕一人じゃ、ないから

「!がっ、__」

一瞬で三木の後ろに現れたのはさっきまで潮江君の相手をしてた立花君。
そのまま彼の首に手刀を落として、こちらをあの鋭い目で見据える。

本当は少し三木と戦いたかったんだけどなあ・・・

そうは思うがこれはチーム戦。

仕方ない。
三木とは今度相手してもらおう。

その鋭い目にふにゃり笑ってみせる。

さあ、なんなりと。
僕は今、このときを勝ち抜くための駒ですから。

あなたにいくらでも従いましょう?







「斉藤。」

仙蔵の静かな声に斉藤はすぐさま反応して、気づいたら目の前で俺と対峙していた。

先ほど消えた仙蔵の行動は三木エ門が倒れていたことで納得がいった。

だが__

「っ、どけっ斉藤。」

「ごめんねえ、潮江くん。僕今立花君に従ってるからね。」

ふにゃり、笑む顔。

忍びの修行を始めたばかりとはいえ、年齢は6年生と一緒。
体格で言えばほぼかわりない。
さらには町で髪結いとして仕事をしていたからであろう。
見た目によらず、度胸がある。

だが、それでも6年の差を知らぬはずがないだろう。

俺に、この俺の相手に1年ともかわらぬこの男を差し向けた。
そのことにえらく腹が立つ。

たとえ先ほどの攻防で体力が落ちていようと、こんな相手にやられるような俺ではない。

「ちっ、」

思わずもれた舌打ちにも斉藤はひるまない。
ふにゃりその笑みのままで懐から武器を出す。

立ち上がればじくじくと痛みを持っている腹。

先ほど綺麗なまでに仙蔵の蹴りが決まったのだ。

だが、そんなもの痛覚を遮断すればたいしたものではない。

意思を強く持てば体はいつものように動く。

息を整えれば、呼吸が収まる。


さあ、この同い年の後輩にきつく灸を据えてやろうではないか。





「うわっ、と!」

目の前の友人は黒い綺麗な髪をなびかせてひゅんひゅんと俺に攻撃を仕掛けてくる。
それこそすきもなく。
その目は完全に戦闘状態だ。

俺を完璧に敵としている。

いや、それは悪いことでもなんでもない。
俺よりも切り替えが早いこいつはこんなところでも優秀の名を轟かせる。

足元に来ると感じた衝撃を飛び上がることで回避する、が、すぐさまその飛び上がった頭めがけて手裏剣が放たれる。
それをすんでのところでよけて。

あーもー!

先ほど使った獣たちもこいつの前では無意味だ。

先ほどの図書委員は1年の後輩、さらには何かと迷う雷蔵に後輩相手だとどこか手加減が垣間見える中在家先輩だったからできたことで。

今のこいつに獣たちをけしかけてみろ、コンマ一秒でお陀仏だ。
そんな結果が見えているのに獣たちを差し向けるつもりなど、ない。

「っ」

頭でいらんことを考えていたからだ、兵助の得物が俺を掠める。

木の上に一気に飛び上がり体勢を整えようとする、がさすがにあいつもそれを理解しているのか、すぐさま俺についてくる。
木に一度降り立ち、飛びのく。
今まで居た場所にいくつもの刃が刺さっている。

木の上では体格的に俺がふりだ。
下に飛び降りて肉弾戦に持ち込む。

さて、いらない思考はここまで。

本気に、なろう。











八の目が本気に変わった。
そうなる前に勝負をつけたかったのに。

八は実はすごく厄介だ。
私とは違って、知っているものに刃を向けることを極端に恐れる。
躊躇する。

その分吹っ切ったときは獣に、なるのだが。

本気の八と戦うのは骨が折れる。
素早さが増し、本能のままに行動をする。
もともとの力の強さも手伝い攻めにくくなる。

・・・七松先輩と同類なのだろう。

だが、ここで負けるわけには行かない。

予算もそりゃあるけど、今何よりも雅さんを安全なところに連れて行くことが優先順位だ。

・・・もう一つ。

潮江先輩の前に生贄の様に出された斉藤を手助けしなくてはならない。

本当に、立花先輩は確かに心強い。
だが、どことなく賭けのようなところも多くて。
でも、その賭けは決してこちらが不利な状態ではやらない。

潮江先輩の前に斉藤を出し、先輩自身はこの中で一番厄介であろう三郎に向かう。

なら、俺がすることは目の前の八を一刻も早く倒して、斉藤の元に駆けつけることだ。


鋭い獣の目をみながら攻め方を決める。

さて、ではさっさと倒そうか、この厄介な友人を。







「そういえばさ、孫兵」

「何、藤内」

じゅんこ、今から少し危ないから離れてて、そう首元に告げれば頷き降りていく。
ああ、あまり遠くに行かないでね?
お散歩はまたの機会に。

ゆっくりと緩慢とした動作で藤内を瞳に映す。

その目は強く意思の力が感じられる。

「僕たちこうやって対面して戦うのって初めてじゃないか?」

言われて考えてみる。
そういえばそうかもしれない。

組が違う上に、学年合同で何かをするときはよく同じ組を組んでいたから。
敵対するときも、1対1というのはなくて。

「そうだな」

返事を返せば、にっと笑う藤内。

「よろしく、ね。」

そんな彼はやはり作法委員。

美麗な姿は舞うかのように。

巧妙な細工は職人のように。

簡単ではない相手だからこそ心躍る。

では、参ろう。

いざ戦場に




「三次郎はともかく虎若が僕に勝てるとでも?」

僕が作った罠にものの見事にかかってくれた虎若は穴の中で目を回している。
咄嗟によけた三次郎はそんな虎若を見て溜息をついている。

「だから言ったのに・・・」

「馬鹿みたいに突っ込むから。」

三次郎の呟きに追い討ちをかけてやれば三次郎も落ち込む。

「兵太夫、言いすぎだよ?」

伊助のその言葉に僕も溜息を一つ落として。

「僕、タカ丸さんの方、手伝いに行って来る。伊助、後頼んでもいい?」

「うん。わかった。タカ丸さんをお願いね?多分すぐに久々知先輩が向かってくれると思うから。」

その言葉に竹谷先輩と攻防を続けている久々知先輩を見る。

・・・残念なことにあまり姿を追えないが。

背を向けた僕の後ろに伊助が立ちふさがって三次郎と対峙する。

まかせてね

背中越しに聞こえた声が心強くてひらり後ろ手に手を振って潮江先輩と向かい合ってるタカ丸さんの元に向かった。












ふるり抱きついているその体が震える。
それをゆっくりと抱き返す。

彼女に化けている

今は私が彼女で彼女が私。

ぎゅっと強く抱きしめれば彼女の手も強まる。

まあ、私が私であることはすでにばれてしまっているのだけど。

「雅さん、僕たちが居ますから」

私の前には心強い二人の後輩に初島、そして神崎だ。

近づいてくるのは焙烙火屋を懐から取り出している立花先輩だ。

その顔はすごく笑顔。

その顔を見てひとつ、溜息。

後輩たちではこの人の相手になどならない。

「4人とも下がれ。私がでる。」


変装を解かぬまま立ち上がって駆け寄ってきた庄に雅さんを預ける。
彦もきたので入れ替わるように進む。

初島の怖がる表情に頭を一つ撫でてやり、神埼がこの距離で違う方向へ向かおうとするのを強制的に修正して。

軽く腕を回す。
首を鳴らす。

目の前に居る上級生を流し目で見て。
不敵に笑う。

あえて彼女の呼び名を使って挑発。

「さあ、始めましょう?仙ちゃん。」

「気持ちが悪いぞ、鉢屋。」

形のいい眉を微かにゆがめて。
そうして一寸のすきもない動作で構える。

さて、お姫様を守りましょうか。













※※※
戦闘シーンかけない・・・。
作法&火薬VS学級、生物、会計








back/ next
戻る