ドリーム小説




 





 宵闇  睦拾肆







ふらり 

喜八郎と八左衛門。

ゆるくお辞儀しあって、構える。

八左衛門の瞳には鋭い光が宿る。

喜八郎はいつもの鋤ではなく、くないを構えて。

ふっと一つ息がこぼされた。

八左衛門が喜八郎に突進する。
かろやかによけた喜八郎はそのまま八左衛門に反撃を始めて。

それらの姿を見つめる。
少しの動きも見過ごさないように。



結果としては、八左衛門の勝ちだった。

八左衛門は獣のように感がとてつもなく鋭く、素早く動き回る。

喜八郎は見た目とは裏腹に、穴掘りで鍛えた力で攻撃を仕掛ける。

だが、最終的には喜八郎が目の前をよぎった蝶に一瞬気をとられた隙に、その首元にくないがつけられていたのだった。



どことなく不機嫌に戻ってきた喜八郎をお帰りとねぎらってやれば無言のまま抱きついてくる。
それが可愛くて思わず笑みを漏らした。

「お疲れ、喜八郎。」

「うん。」

ぐりぐりと腹に頭をこすり付けてくるその姿は甘えたがりの子供みたいだ。








「次」

その言葉と同時に動き出すのは二つの紫。

「あれ?」

「おやまあ。」

よく見れば我が学年の犬猿の中とも言える組み合わせ。

彼らもお互いに顔を見合わせた瞬間いいあいを始めて。

「何でお前が前に出てくるんだ滝夜叉丸!」

「それはこちらの言葉だ三木エ門!ああ、そうか私の相手はお前なのか。はっ、光栄に思うがいい!この私と戦えることを!」

「自惚れるな!滝夜叉丸!お前こそ、この私に歯が立たず悔しがるといい!」

「好きに言ってるがいい!どうせ勝つのはこの私、平滝夜叉ま「いっけ、いっけどんど−ん!だ!」る・・・だ・・・。」

二人の間に入ったのは深緑。

その声の主に二人はさび付いたような音をたてながら顔を向ける。

「楽しもうじゃないか!滝!三木エ門!」

「な、なななな、ななまつ、先輩・・・」

にぱり

学園でも暴君と名を轟かせている、滝夜叉丸の委員会の先輩は太陽のような無邪気な笑みを見せる。

だがしかし無邪気なその笑みは
今はただ邪悪なものにしか見えない。

「うわあ・・・」

「ご愁傷様。」

思わず喜八郎と二人で呟けく。
さらにはすごい勢いでこちらを見てきた三木エ門からこちらもすごい勢いで目線をそらした。

ごめん。頑張れ。

心の中でそう呟いて、友人たちの悲鳴を聞いた。




















「雅ちゃん、作ったおにぎりを校庭に持って言ってくれるかい?」

「っはい、解りました。」

目の前に並ぶのは炊き立てのご飯で作られたおにぎりたち。

いい匂いをさせていてとてもおいしそう。

おばちゃんと一緒に作った大量のそれらは今日のみんなのお昼ご飯になるらしい。

なんでも今日は一年で一度だけの行事の日らしくて。

少し前から皆どことなくそわそわしていたのはこの日のためだったのかと納得する。

(何をするのかは知らないのだけれども。)

作り終えたおにぎりにお漬物を付け合せて、お盆を持つ。


そして、その手が微かに震えていることに気が付いた。


ああ、やっぱり私は怖いみたいだ。

あの子達に会うのが、みんなに会うのが。

あのまっすぐなまなざしが、曇りのない心が。

まるで私の無知さを、私の汚れを示しだすようで。

優しいあの手、それと同じ手で人を殺めている

温かい言葉、それと同じ口で相手に最後の言葉を投げかけている

それらはとても、


とても怖い



『そんなの人殺しと一緒じゃない!』


あの日あの言葉を言い放ったときから、私は彼らに会えていない。

彼らと話ができていない。

たぶんみんな私を避けていて、そして私はそれに気づかないふりをしている。

小さな子達は今までと同じように無邪気に私によってきてくれるけれど、そんな彼らもいずれ紅く染まるのだと考えてしまうと、怖くて。

でも私では、彼らを理解することできないと思うと、悲しくて。



どうすればいい?


誰に問いかければいい?

誰に聞けばいい?

答えは誰が持っているの?


どこにも答えは、ない。


ふ、と頭に浮かんだのは、彼女。


私と同じところから来たかもしれない、少女。

唯一私にこの世界に慣れろといった人。

そして唯一私に帰れといった人。

そう告げた彼女は、何を知っているのだろうか。



空を見れば蒼い空。

それは私の心とは裏腹で。

そっと息を吐き出してみんなの元に向かった。











※※※
心の葛藤。
・・・相変わらず戦闘シーンかけない、ですね。
ちなみに蝶は、ほら、八ざですからね。
うん。












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