ドリーム小説





宵闇  漆







あいつが来てからの日常は大きく変わった。






___わけでもなく、はそこそこ今まで通りの日々を過ごしていた。




朝。
日が昇る前に起床。
身支度を軽く整え顔を洗うために井戸に向う。
その足で食堂へと向かいまだ誰も来ていないそこへと入る。

米を取り出し大きな鍋に放り込むとそれを水場へと持っていき研ぐ。
ちなみにこの学園のしかも育ち盛りな子供たちの食事なので膨大な量である。
本来なら食堂のおばちゃんの仕事なのだがある条件の下でがやっているのだ。

その条件は、『甘味を勝手に作ってもいい。』という条件だ。

そんなことで、と思うかもしれないがこれはにとっての死活問題だったりするのだ。
もともとは、とんでもなく甘味が好きだ。
前の世界にいたときも毎日食べていた。
(ちなみに一番すきなのはチョコレートだったりする。)

しかし、この世界の甘味の数はそんなに多くはない。
そして茶店に行くにしても費用がかさむ。
もう一つ。
男が甘いものなど、とよく言われるところなのだ。
この世界は。


だがしかし、今その条件は変わりつつある。

『ご飯を炊く代わりに、朝のおにぎり、それから昼のご飯を外で食べれるよう、何かにつめて欲しい。』

そう言ったのは彼女が来てすぐのことだった。

此処にしか居場所がないのであろう、彼女はきっとこの場所で働きだすだろう。

会いたくないのだ。
彼女には。
昔を、帰れる筈のない場所を懐かしんでしまうから。


「おはよう、くん。いつもありがとうね?」
「いえ、俺も交換条件を付けさせてもらってますから。」

研ぎ終わった米を、火にかける。
それくらいにいつもおばちゃんが顔を見せるのだ。


「それじゃあとはやるから行っていいわよ?」
「解りました、それでは・・・。」




食堂から出ると次に向うは中庭である。
曰く、朝錬というのを行うのだ。

は成績が良い。
でも、実技は人並みである。
成績は努力すれば何とかはなるが、実技はそうもいかない。
どんなに周りと馴染んだところで、所詮、は女なのだ。
体力的にも、力的にも劣ってしまう。
それを補うため、毎日はこうして朝錬を重ねる。

ただ、人よりも実戦経験はある。
それは師匠と呼んでいる育て親のせいではあるが。



一通り汗を流すと井戸へと向う。
この時間は皆が起き出したころで長屋近くの井戸は混む。
そのため少し離れた井戸で水浴びをするのだ。
(ちなみに此処ではよく、6年生である潮江文次郎先輩や、七松先輩。
さらには5年の鉢屋先輩などにも会う。)

水を滴らせながら部屋へ戻り、紫色の制服に袖を通す。

ちなみに帰りに食堂の裏を通ってくるときにおにぎりは手に入れている。
おばちゃん特性の(今日の具は昆布だった。)おにぎりを食べてほっと息をつく。
始業時間までは、授業の予習をするのだ。


そろそろ授業の時間に近づく。

「おはよ。」

襖を開けて、廊下に出れば聞こえてきた声。
それは一番の友人のもの。

「おはよ。」

同じように返し、喜八郎と連れ立って教室へと向った。








昼を告げる鐘が鳴る。

それと同時にざわざわとあたり一面に喧騒が満ちる。

ずっと机に向っていた所為でいささか固まった体をぐっと伸ばす。

。」

その声に顔を上げれば、そこには喜八郎の姿。

「昼だぞ!」

さらにはその後ろに滝夜叉丸の姿だ。

「ん〜・・・。」

(さてどうしようか)
食堂に行かない言い訳を考える。

最近はいつも用事があるといって、その場所に行くのを極力避けていたから。

考え出したに痺れを切らしたのか、些か乱暴に滝夜叉丸がの腕を引っ張って立ち上がらせた。

「わわ、」

「今日、雅さんは1年は組の連中と町にお使いに行っている。だから、食堂にはおばちゃんしかいない!」

きっぱり、そういわれた言葉がすとんと胸に落ち着く。

「・・・」

確認のために喜八郎を見れば、微かにだが頷いて。

「行くぞ!!」

もう人がいなくなった教室から滝夜叉丸、喜八郎と連れ立って食堂に向った。


久しぶりの食堂で食べるご飯はとてもおいしかった。





夕方。
授業が終わってから皆がることは実に様々である。

自らの趣味に費やすもの。
鍛錬に励むもの。
仲間との談笑に花を咲かすもの。

そして、今日ののように委員会に向うもの。



「・・・鉢屋先輩。」

「何だ?。」

「どうしたんですか?先輩。」

「庄・・・。」

「先輩もいかがですか?」

「彦・・・。」



がらりと開けた学級委員長委員会室。
そこには、委員長代理をしている鉢屋三郎。
そしてかわいい1年の後輩である庄左ヱ門、彦四郎。
その3人が仲良く談笑をしながら、

  お茶をしていた。


今年から入ったこの委員会。
には未だにお茶する以外の活動内容を見たことがなかった。






夜は喜八郎が届けてくれた夕食を食べる。
始めは断っていたが、喜八郎が食堂のおばちゃんに話をしてくれたらしい。
彼はとても優しい。



そうして1日を終えた後、夜の鍛錬に繰り出すのであった。










※※※

の日々
お風呂は、保健室にある(といたします)けが人用のお風呂を拝借。








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