ドリーム小説
宵闇 漆拾壱
まどろむ意識の中。
何度も浮上するたびに引き戻される闇の中。
暖かい陽だまり。
俺の本当の世界。
何度も夢を見る。
幸せだったあのときを。
人を傷つける刃など持たなかったあのときを。
大好きな両親
優しい友人
あの世界に、あのときにもう一度戻れたならば。
そう頭の中でなんども反響する声
どうやら俺は思っていたよりも、あの世界に未練があったようだ。
帰れなくていいと思いながらも、帰れるかもしれないことを知れば、体が無意識に動いて。
泣き叫ぶほどにおろかなくらいに。
でも、でも
あの世界に返りたい帰りたいそう思う意識の中、違うものもあって。
あの世界にいまさら返ってどうする?
まだあの世界に俺の居場所があると思うの?
この世界の皆を置いていくの?
血に汚れたこの体で、再びあの世界に帰れるとでも?
頭に浮かぶ、大切な友人。
尊敬する先輩方。
可愛い後輩たち。
養い親。
全ての答えは見つからなくて、何度も何度も意識がめぐるめぐる。
答えは出ないまま。
意識は急激に浮上した。
何度か見たことのある天井。
薬草の匂いからここが医務室であることが解った。
今はここにいるのはだけみたいだけど。
手を上に伸ばせば、焼けるような痛み。
それを無視して目元を覆う。
痛む腕よりも、あまりにも静かな学園に、胸が、痛い。
彼女はもういないのだと、そう思うとそれはとてもやりきれなく感じた。
彼女に帰れるはずがないとこの世界にさっさと慣れろといったくせに、返ってしまえと言い放って。
帰る彼女を見送るつもりが、その手にすがり付こうとしてしまった。
なんておろかで滑稽。
その手をとるということはつまりこの世界との決別を意味するというのに。
何かがすごい勢いで近づいてくる気配がした。
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