ドリーム小説




 



 宵闇  漆拾参















三郎を5年の先輩たちが引っぺがして、遅れてきた滝夜叉丸たちが喜八郎を取っ払う。


(滝夜叉丸や三木エ門には怒られた。)

(タカ丸さんは困ったように笑いながら髪を一つ撫でてくれた。)


そうしているうちに、戻ってきた伊作に皆追い出されて。




、前も言ったと思うけど、無理しちゃだめだよ?」

伊作は手当てをしながらに話しかける。

それに無言でいれば困ったように笑われて。

「伊作!が目覚めたって聞いたぞ!」

すぱん

どこかで聞いたような音を立てながら入ってくるのは深緑の集団。

小平太を筆頭にして、仙蔵、文次郎、長次、そしておくれて留三郎だ。

「・・・小平太、は「うん、おきてるな。」・・・」

伊作の声をさえぎって、いつもとは違い控えめに笑う。

その顔にはやはり悲しみがあって。

「心配、したぞ。」

そっと呟きそばに座るのは仙蔵。

優しく撫でられるぬくもりがとてもとてもいとおしい。

「ごめんな、さい」

返事を返せば笑われて。

「ったく、心配するこっちのみにもなって見やがれ」

ぶつぶつと仙蔵とは反対側に文次郎が座る。

それに仙蔵がくつり、喉の奥で笑って、に耳打ちをする。

「こいつは、人一倍心配していたぞ。」

「っ、おいっ仙蔵!」

それに思わず笑みが漏れる。

そっとの枕元におかれたのは甘い匂いのするもの。
それをおいたのは長次で

「・・・見舞いだ」

それだけ告げて、入り口に一番近いところに座った。

そちらを見れば、不意に目が合う。

その人はばつが悪そうにいくつか視線をさまよわせて、そうして決心したようにをその鋭い目で見咎めた。


「少し話していいか?」

そっと切り出されたそれにこくり、頷く。


「・・・その、すまなかった・・・。怪我、・・・」


「いえ、これは俺の失態です。先輩は悪くないです。」

告げれば、そうか、と返されて。

「彼女の言ってたことは全て本当ですよ。」

恐らく聞きたかったのであろう、彼女のことを言う。
それに反応するのは、留三郎だけではなくて。

「あの世界は、この世界とはまったく違います。確かに人を傷つけることは許されない。」

大分薄れてしまった記憶ではあるけれども、それでも確かにの中に存在するそれら。

「傷つけられることもほとんどない。彼女の反応はあの世界で言う模範的なものです。」

そう。あの反応は決して間違いじゃなくて。
むしろあの世界で生きていた何よりの証拠。

「どうやってこの世界に来たのかも、どうやってあの世界に返るのかも、俺にはわかりません。」

そういえば皆がそっと視線をはずす。

どこかで期待していたのだろう。

その先輩方のどこか痛々しい様子にそっと目を閉じる。

しばし医務室に落ちる無言。
それを破ったのは仙蔵だった。

は雅を嫌いじゃなかっただろう?」

突然の問いに彼女を脳裏に浮かべる。

「・・・苦手でした。過去の自分を見てるみたいで歯がゆくて。」

確かに嫌いではなかったのかもしれない。

あの姿は以前の自分と同じもので。

「結局俺は彼女に俺を投射してたんですよ。」

簡単に出た結論に、留三郎の驚いたような気配。

「今ならそれが、わかります。」

そう告げて、笑む。
それに医務室の中の空気が和らいだ。

は、帰るのか?」

不意に小平太からこぼされたそれに皆がを見る。

再び聞かれたそれに、ふわり、今度は微笑んで答えることができた。

「俺は帰りません。喜八郎が、三郎先輩が、俺にここにいて欲しいといってくださったので。」

それに皆も笑ってくれて。



「もうそろそろ、いい加減にしてくれるよね?みんな」

今まで黙っていた伊作がにこり、微笑んで言うそれに皆が慌てて立ち上がる。



名前を呼ばれてそちらを見ればにかり笑顔を浮かべる小平太。

「勝手に消えたりしたら、許さないぞ?」

「・・・またいつでも本を借りに来い」

ぼそり長次がそう口にして。

「さっさと怪我治せ。稽古みてやるから。」

そっぽを向いて文次郎が言う。

、忘れるな。私たちも、お前にこの世界にいて欲しいと思っている。」

最後にもう一度優しく髪を撫でながら仙蔵が。

それはきっと彼女に言いたかったであろう言葉。

でも確かに今はに向けられていて。


「また、聞かせて欲しい。彼女の世界の、話を」

最後まで部屋に残っていた留三郎がを見ていつものように優しく微笑んだ。

「もちろん、いつでも、です。」


懐かしいその表情に、笑って答えた。








※※※
仲直りと言うほど喧嘩していたとは言い切れないけれども、わだかまりは解消されて。
留さん、大好きなんですけどねえ・・・










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